2017年11月23日木曜日

第18回東京フィルメックス〜映画『シャーマンの村』Q&A text岡村 亜紀子

 11月21日の上映がワールド・プレミアとなった『シャーマンの村』のQ&Aの模様をお届けします。司会は「ユー・グァンイー監督の作品が本当に大好き」だという林加奈子ディレクターです。

 始めに監督からのご挨拶があり、
「皆さん、こんにちは(日本語で)。
今日はこの映画を観て下さって本当に有難うございます。
この映画は2007年に、私自身の故郷である黒龍江省の五常県というところで撮影を開始して、撮影を続けて編集して完成し、今日こうして観て頂くまで10年の歳月がかかりました。
今回の東京フィルメックスにこうしてお招き頂いたことに心から感謝しています。フィルメックスに来るということは外国に出るような感じではなく、親戚のお宅にお邪魔したような感じがして、とても親しみを感じます。」
とお話されました。

 ユー・グァンイー監督作品の東京フィルメックスでの上映は、第8回の上映作品『最後の木こりたち』(2007)、第9回の『サバイバル・ソング』(2008)、第12回の『独り者の山』(2011)に続き、本作で4回目となります。

『シャーマンの村』

林ディレクター
今、私たちを親戚といって下さいましたけれども、画の中のシャーマンの村の方達が、カメラに対して凄くfamiliarというか親しい感じがします。
10年密着して撮ったというのはこういうことなのだなと感じたのですが、シャーマンの村の人々との出会いのきっかけについて、監督からご説明頂けますでしょうか?

ユー・グァンイー監督
この場所は中国の北方にあるハルピンから230キロ離れたところにあります。
26歳以前はこの辺りでずっと過ごしていました。
私の故郷の村は映画の中の村から8キロほど離れたところにあります。
この人達と知り合ったのは『最後の木こりたち』を撮っていた2004年の頃です。
それから彼らとお付合いするようになり、2007年の秋にこの作品を撮影することになりました。

(ここからは、会場からの質問となります。一部抜粋してお伝えします。)

Q.1
おそらく出演していた子供たちが貼ったのだと思いますが、シュー(出演したシャーマン)の家の中に台湾のポスターが貼ってあったのが、子供が去った後として映り、私にはとても印象に残りました。
監督の(故郷の)お近くの村にシャーマンの方が居たそうですけれども、中国には今もこうしたシャーマニズム的なことが沢山あるのでしょうか?

ユー・グァンイー監督
アリガト(日本語で)。
中国には他の地域にもこうした村が割とあります。
なかなか医療を受ける環境が十分に整っておらず、医療費も高い為、医者にかかれない時には彼らのようなシャーマンに頼んで病気を治してもらうという風習がまだ数多く残っております。
そういったわけで、シャーマンは村の人々にとって精神的な拠りどころとなっています。
私はこの映画の中で、神の導きに従って、人間がどう生きるかを表現したいと思いました。

Q.2
大学で映画を学んでいて、この夏ドキュメンタリーを撮りました。
カメラを動かすことがドキュメンタリーだと自由なので、対象が左右に動くと(カメラを)動かしてしまうことがあります。
また、光量などを考えて動かせなかったり、外へ出て行くことを回避したりもするのですが、監督の映画を観ていると光量などを超えて映す対象を追っているように感じました。
カメラを動かす決断はどういったところでしていますか?

ユー・グァンイー監督
映画が誕生して100年以上経ちますが、みんな映画を学ぶ為に古典的な名作を観て、映画に関する基礎的な本を読んできたわけでしょうけれども、私としては、テクニックはあまり重視をしていません。
映画を撮る上でより重要だと思うことは、撮る人の誠意であって、何を撮りたいかをいかに強烈に心の中に持っているかだと思います。

林ディレクター
有難うございます。
映画、お待ちしています。

Q.3
この辺りに住んでいるシャーマンの伝統を持つ人々は、何の民族なのでしょうか?
漢民族なのか、それとも他の民族でしょうか?
また精霊でキツネが出てきましたけれども、他の動物の精霊もよく出てくるのでしょうか?
基本的にはキツネだけなのでしょうか?

ユー・グァンイー監督
この村に住んでいる方達はみんな漢民族で、私自身も漢民族です。
シャーマンは漢民族よりも少数民族において歴史・風習があり、漢民族に伝わったのは後年になります。
もともとシャーマンは山東省や河北省で非常に多かったのですが、黒龍江省に入ってきたのはここ100年くらいのことになるかと思います。
シャーマンというのは動物の精霊と非常に関わりがあります。
映画の中に出てきたキツネや、そしてオオカミですね。
そのような精霊と交信することがあります。

Q.4
文化大革命の時に宗教はかなり弾圧されたかと思いますが、人間にはこういうものが非常に必要だと理解しています。
文革の時に、シャーマンはどのような扱いを受けたのでしょうか?
必要だから今のように(シャーマンの風習が)復活してきたのでしょうか?
それともずっと残っていたのでしょうか?
その辺りを文革という歴史と絡めてお聞きしたいです。

ユー・グァンイー監督
有難うございます。
中国に大変詳しいご質問ですね。
文革の時は、このようなものは一切禁止されていて絶対にあってはならないものでした。
当時のことは、あまりにも暗い時代だったのでもうあまり語りたくないですね……。
現在のところ、政府としてはシャーマンの存在や行いについては見て見ぬ振りで、そんなに反対も禁止もしないけれども奨励もしないという態度をとっています。
実際問題として若い人がどんどん都会に出て行き、村に残っている比較的お年をめしたシャーマンの方達もいまや少数になってきています。
それが現状です。
この映画を撮る時に、本当に色んな村の様子を目にしたわけですけれども、老人が段々と少なくなっていて、そして子供たちも(映画の中で)ああやってシャーマンの風習を見ています。
そういう風に子供たちによく見せて、大切にしていく風習であることも考えました。
様々なことが変わっていく中で、かろうじてシャーマンの風習があのように残っている、それをこの映画の中で描いたわけです。

Q.5
この村の人達はこの映画を観たのでしょうか?
観たとしたらどういった感想を持たれたのでしょうか?

ユー・グァンイー監督
この映画自体はまだ村の人達は観ていません。
以前の私の映画を観た村の人達は、非常に村の生活がリアルに撮られていることで、こうした生活を映像で記録することで、これからの子孫も観ることが出来て、代々受け継いでいくことが出来るととても喜んでいます。
彼らにとっては、映画というのは国の指導者のような偉い方達が観るものであり、都会に住む素敵な人達が観るものだと思っているようです。

林ディレクター
英語のタイトルが『Immortals in the Village』といいまして、最初DVDを送ってもらった時に「不死の村」と書いてあるけれど、(映画の中では)人がどんどん亡くなっていって……なんてアイニカルというか絶妙なタイトルだなと思ってシビレました。
後から、第17回東京フィルメックスの審査委員長を務めたトニー・レインズさんが(英語のタイトルを)つけたとお聞きして、「ああ、やっぱり」と思いました。
もう一つ舞台裏で聞いたお話で、「次回作について何か構想がおありになるんでしょうか?」とお聞きしたところ、驚きのニュースがあります。
ユー・グァンイー監督からお差し支えのない範囲で次回作について少しお話しして頂けたらと思います。

ユー・グァンイー監督
今(会場に)いらっしゃるトニー・レインズさんは私の本当にいい友人ですけれども、この映画の為に素敵な英語のタイトルをつけて下さって心から感謝します。
有難うございます。
トニーさん立ち上がって頂けますか?

(場内から暖かい拍手がおこりましたが、トニー・レインズ氏は笑顔で手を振るに留めていました。会場がとても和やかな空気で溢れました。)

林ディレクター
意外とシャイですね…!

ユー・グァンイー監督
私は故郷の村の周辺で、既に13年かけて4本の映画を製作してきましたが、村の人達を記録するという映画製作は、ここで一段落つけようと思っています。
今ご紹介に預かりましたけれども、次回作は劇映画で少し商業的な作品になるかと思います。
寒冷地で過ごす人達の苦しみや喜び……というみんなが持っている心の世界を描こうと考えています。
ある村で殺人事件が起こり、一人の人が殺されて、その殺人の真相が明るみに出るにつれ、最終的には……様々な非常にごちゃごちゃした事件がそこで一挙にバーっと爆発して起きる、というような映画です。

林ディレクター
新作が10年後ではなくて数年後に拝見出来るように楽しみにお待ちしたいと思います。
ユー・グァンイー監督、本当にどうも有難うございました。

 以上、和やかなムードで進んだQ&Aの模様をお伝えしました。
『シャーマンの村』は中国の寒村に住むシャーマン達とその周辺の人々の生活を、4年以上に渡って追ったドキュメンタリーです。映画の中で、シャーマンたちは歌と踊りを用いて精霊を呼び出し、ある時は病気になった村人の為に精霊の伝令役となって治療法を伝え、またある時は幼子の厄払いを行うなどする姿が映画に映っています。
 映画の中でたびたび映るシャーマンの風習は、多くの観客にとって馴染みの無いものであるでしょう。霊的なものを信じるかどうかや、本作への感じ方も人によって様々だと思います。
 一見別世界の出来事に思えますが、本作はシャーマニズムを通して、あくまで村の人々の生活というものを記録しているのだと思います。そこに、自分の環境とは違うかもしれないけれど、壁に貼られたポスターのようにどこか感覚的に繋がるところがあると感じました。また、現代に残っているシャーマンの風習を同時代に観ることにやはり意味があり、鑑賞を通して、自分の価値観や考え方の一端を感じることが出来るのではないでしょうか?
 

会場ロビーに飾ってあったポスター
 
(取材/文:岡村亜紀子)

『シャーマンの村』
Immortals in the Village / 跳大神 
中国 / 2017 / 109分 

監督:ユー・グァンイー(YU Guangyi) 

作品解説
中国東北地区の山間部の人々を一貫して記録し続けてきたユー・グァンイーが、寒村のシャーマンたちの生活を4年以上にわたって追った画期的ドキュメンタリー。それは人々が精霊たちと密接に暮らしていた時代の、近いうちに消滅してしまう文化の記録でもある。

作品紹介ページ(第18回東京フィルメックス 公式ホームページより)
http://filmex.net/2017/program/competition/fc07



〈第18回東京フィルメックス〉
■期間
2017年11月18日(土)〜11月26日(日)(全9日間)

■会場
A)
11月18日(土)~11月26日(日)
有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇にて

B)
11月18日(土)~11月26日(日)
 有楽町朝日ホール他にて

■一般お問合せ先
ハローダイヤル 03-5777-8600 (8:00-22:00)
※10月6日(金)以降、利用可

■共催企画
・Talents Tokyo 2017(会場:有楽町朝日スクエア)
・映画の時間プラス(期間:11/23、11/26/会場:東京国立近代美術館フィルムセンター)

■公式サイト
http://www.filmex.net/

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【執筆者プロフィール】

岡村 亜紀子:Akiko Okamura

某レンタル店の深夜帯スタッフ。

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