2015年1月2日金曜日

映画『ベイマックス』text落合 尚之





僕はことシネメンバーの中でも年長組に入るので、若い人たちの知らなさそうな話をしましょう。今年更に一歩アラフィフに踏み込んだおじさんが、年齢一桁台のころ愛してやまなかった特撮テレビドラマ『ジャイアントロボ』。原作は『鉄人28号』の横山光輝先生で、少年が操る巨大ロボが、悪の組織が繰り出す怪獣・怪ロボットと毎回激しい闘いを繰り広げていました。腕時計型の音声入力デバイスで少年が命令を与えると、ロボは奇怪な声を発してその鋼鉄の拳を振るうのです。ストイックな鉄の面差しと無骨でぎこちない動きの重厚感・重量感は、正に「巨大ロボ」という名のロマンの具現、そのものでした。ロボはあくまで少年の命令によってのみ動作し、自分でものを考えたりはしないのですが、そのロボが一度だけ少年の命令に背いて独自の行動をとる場面があります。それがドラマの最終回。悪の首領・ギロチン帝王を倒すため、ロボは帝王を抱きかかえたまま宇宙へ飛び立ちます。少年の涙ながらの静止命令を無視して、人類を救う為に帝王もろとも自ら隕石に突っ込んでいくジャイアントロボ。心を持たない筈のロボットが見せた自己犠牲の精神は、多くの視聴者の涙を誘いました。純真な子供だった僕も、勿論この場面でダダ泣きです。

この『ジャイアントロボ』の最終回は多くのロボ好き少年達の心に消えない刻印を刻み込み、以降「ロボットの自己犠牲」というモチーフはSFアニメ・特撮の歴史の中で連綿と受け継がれ、繰り返し語り直されていくことになります。その2014年時点での最新版が、アメリカからやって来たこの『ベイマックス』です。子供の頃の僕はジャイアントロボの自己犠牲を、ロボに心が芽生えたからだと信じて疑いませんでしたが、今にして思えばあれは単なるシステムエラーだったのかも知れない。機械に心があるかのように感じるのは、それを見ている人間の側が無意識にそこに心を求めてしまうからです。『ベイマックス』のスタッフはその点大変クレバーで、ベイマックス自身は終始プログラムされた行動をとっているだけなのに、見る側の気持ちによって、あたかもそこに心があるかのように見える、という描き方を最後まで一貫して守り続けています。ケアロボットとしてのプログラムを取り除くと一転して破壊兵器になってしまうという描写も、「使う人によって善にも悪にもなる力」という『鉄人28号』以来のテーマをちゃんと踏まえている。「ロボットもの」というジャンルに対するリサーチの行き届いた、模範解答のような脚本だなと感じました。またそれは、ロボットというテーマを突き詰めていくと結局この形に行き着くということなのかもしれません。

日本版タイトルについての問題ですが、少年とロボットの関係に主眼を置いた構成になってるので、むしろ『ベイマックス』で正解だと僕は思います。

百点満点だけど、なおプラスαが欲しい。★★★★☆
(落合 尚之)

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特撮『ジャイアントロボ』

悪の組織BF団と世界的な防衛組織ユニコーンの戦いを通し、BF団の操る怪獣およびロボット対ユニコーンの一員となった少年・草間大作の命令のみで動く巨大ロボット・ジャイアントロボ(GR1)の戦いを描く。

仮面の忍者 赤影』に続く東映制作・横山光輝原作の特撮作品。日本の特撮巨大ロボット作品の代表格であり、後年の作品に大きな影響を与えている。

『ジャイアントロボ最終回』
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http://www.dailymotion.com/video/xn83ba_ジャイアントロボ-最終回-2-2_shortfilms

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監督 : ドン・ホール / クリス・ウィリアムズ

製作 : ロイ・コンリ

製作総指揮 : ジョン・ラセター

脚本 : ロバート・L. ベアード / ダニエル・ガーソン

ヘッド・オブ・ストーリー : ポール・ブリッグス

プロダクション・デザイン : ポール・フェリックス

音楽 : ヘンリー・ジャックマン

作品情報:かけがえのない大切な人を失った時、ぽっかりと胸にあいた穴はどう治せばよいのだろうか。最愛の兄を失い心に深い傷を負った14歳のヒロの前に現れたのは、何があっても彼を守ろうとする一途な<ケア・ロボット>ベイマックスだった。

 日本とサンフランシスコからインスピレーションを得た架空都市サンフランソウキョウを舞台に、壮大なスケールで描かれる二人の絆の物語は問いかける―「優しさで世界を救えるか?」と。素晴らしい奇跡が起こるその瞬間を、ぜひ大切な人と一緒に・・・。

ディズニー史上いまだかつてない優しすぎるロボットと少年ヒロの絆を描いた感動のアドベンチャー『ベイマックス』が、日本中を限りない優しさと感動で包み込む。

公式ホームページ:http://www.disney.co.jp/movie/baymax.html

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