2015年6月17日水曜日

映画『サンドラの週末』text長谷部 友子

「サンドラという名の災難」

病ゆえに休職していたサンドラは、復職することになった矢先の金曜日、解雇を言い渡される。解雇を免れる方法は、16人の同僚のうち過半数が自らのボーナスを諦めること。ボーナスか、サンドラか。月曜日の投票に向け、週末の2日間サンドラは同僚たちを説得に回る。

サンドラという弱き者が困難に立ち向かう。ある意味、王道の物語なのだろう。しかし本当にそうだろうかとふと思った。説得という困難に彼女は立ち向かったが、16人の同僚にすれば、サンドラという災難におそわれる週末でもあったわけだ。

ある者は、妻の失業によりボーナスがなければ自分たちも生活ができないと言い、ある者は仕事で得る賃金だけでは足らず休日に別の仕事をしていることが判明し、ある者はサンドラを裏切るような形になっていたことに罪悪感を持っていた。サンドラの突然の訪問は、リトマス試験紙のように彼らの生活と価値観を浮き彫りにする。予期せぬ唐突さで問うてくるサンドラは、はたして弱き者なのだろうか。

サンドラは16人に等しく、ボーナスを諦め自分を選んでほしいと求めるが、16人はそれぞれの対応をする。居留守を使い話すら聞こうとしない者、泣いて謝る者、サンドラのみが理由ではないものの離婚を決意してまで彼女に味方しようとする者。そう、理由はいつだって問うてくる相手ではなく自分の側にある。サンドラという災難は常に訪れる。それはある者にとっては厄災であり、しかしある者にとっては好機ですらある。凡庸とみえる日々の生活の中、多分私たちはいつも問われている。あなたはどんな選択をし、いかなる人間であるかと。サンドラは彼らのその選択を炙り出していく。


サンドラの唐突度:★★★☆☆
(text:長谷部 友子)


映画『サンドラの週末』


2014/ベルギー=フランス=イタリア/95分

作品解説
体調を崩し、休職していたサンドラ。回復し、復職する予定であったが、ある金曜日、サンドラは上司から突然解雇を告げられる。 解雇を免れる方法は、同僚16人のうち過半数が自らのボーナスを放棄することに賛成すること。 ボーナスか、サンドラか、翌週の月曜日の投票に向けて、サンドラが家族に支えられながら、週末の二日間、同僚たちにボーナスを諦めてもらうよう、説得しに回る。

出演
サンドラ:マリオン・コティヤール
マニュ:ファブリツィオ・ロンジォーネ
エステル:ピリ・グロワーヌ
マクシム:シモン・コードリ

スタッフ
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
助監督:カロリーヌ・タンブール
撮影監督:アラン・マルコアン(s.b.c)
カメラマン:ブノワ・デルヴォー
カメラマン助手:アモリ・デュケンヌ
編集:マリ=エレーヌ・ドゾ
音響:ブノワ・ド・クレルク
ミキシング:トマ・ゴデ
美術:イゴール・ガブリエル
衣装:マイラ・ラムダン=レヴィ
メーキャップ:ナタリ・タバロー=ヴュイユ
ロケーション・マネージャー:フィリップ・トゥーサン
ユニット・プロダクション・マネージャー:フィリップ・グロフ
スチール:クリスティーヌ・プレニュヌ
制作:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、ドニ・フロイド
エグゼクティヴ・プロデューサー:デルフィーヌ・トムソン
共同製作:ヴァレリオ・デ・パロリス、ピーター・ブッケルト
製作協力:アルレッテ・ジルベルベルク

公式ホームページ:http://www.bitters.co.jp/sandra/

劇場情報:Bunkamura ル・シネマ、他、劇場にて公開中

0 件のコメント:

コメントを投稿