2015年7月3日金曜日

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』text高橋 雄太

「バイオレンス駅馬車」


ゴダールは「男と女と自動車があれば映画ができる」と言ったという。
本作はそのテーゼを具現化した。しかも「目的地を目指す」と「追いかけっこ」という最も単純な形で。
男:マックス(トム・ハーディ)、ニュークス(ニコラス・ホルト)
女:フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、妻たち
この男女の一団と、イモータン・ジョーなどの敵とが、追いかけっこをする。

アイアンマンが空を飛び、自動車がロボットにトランスフォームし、X-MENが超能力でバトルする21世紀。
生身の人間が改造車でカーチェイスするなど時代錯誤とも思える。
だが、単なる光の点にしか見えない弾丸やミサイル、光線を出すだけの超能力では、本作の迫力は得られない。
人が傷つけば血が出る。車がクラッシュすれば破片が飛び散り、砂煙が舞う。
『マッドマックス』では、そんな当たり前のことが画面狭しと繰り広げられる。
画面いっぱいに散乱するモノから、物質の体積や質量、materialとしての物質の存在感が伝わってくる。

おバカ映画、低IQと言うなかれ。
横と縦、近さと遠さの切り替えが、メリハリを生んでいる。
自動車の猛スピードの水平移動。そこにバイクがジャンプして爆弾投下。
さらに、棒飛び隊が上空で振り子運動する。
全編通じての横移動に、縦のアクションが加わるのだ。
クラッシュ時の目が飛び出る超クローズ・アップなど、過剰なまでの接近がある一方で、空撮による車列のロングショットもある。
遠近の視点で、状況説明と激しさを両立させている。

そしてシンプルさ。
冒頭に述べたように、乗り合わせた乗客が敵の追跡を振り切って目的地を目指すことが、本作のほぼ全て。
乗客に妊婦がいる。大切な荷物(本作では種子)を抱えている。
また、乗り物から乗り物へと飛び移る曲芸のようなアクションもある。
まるでジョン・フォードの『駅馬車』だ。
遠近の視点の使い分けも共通。
そこで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を21世紀に生まれた「バイオレンス駅馬車」と勝手に認定しよう。

シンプル・イズ・ベスト度:★★★★★ 





『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

2015/アメリカ/120分

『マッドマックス』(1979)のシリーズ第4作。石油も水も尽きかけた世界。主人公は愛する家族を奪われ、本能だけで生きながらえている元・警官のマックス(トム・ハーディ)。荒野をさまようマックスは、資源を独占し恐怖と暴力で民衆を支配する凶悪なイモータン・ジョーに捕えられる。そこへジョーの右腕の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、配下の全身白塗り男ニュークスらが現れ、マックスはジョーへの反乱を企てる彼らと協力し、奴隷として捕われていた美女たちを連れ、決死の逃走を開始する。追いつめられた彼らは、自由と生き残りを賭け、決死の反撃を開始する!

出演
マックス:トム・ハーディ
フュリオサ:シャーリーズ・セロン
ニュークス:ニコラス・ホルト
イモータン・ジョー:ヒュー・キース=バーン
トースト:ゾーイ・クラビッツ

スタッフ
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラザリウス
撮影:ジョン・シール
美術:コリン・ギブソン
衣装:ジェニー・ビーバン
編集:マーガレット・シクセル
音楽:ジャンキー・XL
制作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー、P・J・ボーデン
製作総指揮:イアイン・スミス、グレアム・バーグ、ブルース・バーマン

劇場情報:TOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマ、MOVIX、ピカデリーの各劇場他にて絶賛公開中

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