「史上最強オシャレムービー」
なんという意識高い系映画。
この作品を見終わった時の正直な感想だった。馬鹿にしているように聞こえるかも知れないがそんなつもりはない。そうじゃないんです。あまりにもオシャレ。オシャレすぎたのだ。
オシャレな男女がオシャレな服を着てオシャレな家に住みオシャレな会話をし、オシャレな曲にオシャレな歌詞を乗せてオシャレに歌うという、とんでもないオシャレミュージカルムービーだ。
非オシャレ人間からするともう、オシャレが過ぎてオシャレの海に溺れそうでたまらなかった。申し訳なかった。
すみません。
しかし本作はただただオシャレなだけではない。主人公のイヴは拒食症を患っており、精神病棟に入院中で影のある孤独な女の子。精神的にもダウナーになりがちでトリッキーな言動が目立つ。そんなガールとミーツするボーイであるジェームズは内気で心優しい音楽青年。心は優しいが頭が固いため音楽活動も行き詰まり中。そんなガール&ボーイのケミストリーがスパークし、最終的にはミュージックによっておのおのがそれぞれの道に導かれていくようなハナシです。
オシャレ。
さすがベル&セバスチャンをやっているだけのことはある。結局オシャレに行き着きそうになるところだったが、そう、ベル&セバスチャンのフロントマンであるスチュアート・マードックが監督している本作はキラキラしたポップミュージックで溢れているのだ。音楽好きにはぐっとくるものがある。70年代風のレトロでポップな色彩もまぶしい。ラジオやカセットテープやレコードプレイヤーといった小物使いも心にくい。そして、「ああ、音楽が好きな人が作った映画だなぁ」という音に対するひたむきさ。
キラキラしている。
この映画の前では誰もが「so shiny! so chrome! 」となってしまうわけです。
だがその一方で、舞台が70年代くらいなのだろうかと思って観ていると、主人公の女の子がおもむろにスマホを取り出したり、「今時テープで音楽渡すってある?」とか言われてしまったりと時代感が不明瞭。出来る限りこの世界に埋没しようと試みても、先の小物使いやセリフの端々の微妙なズレによってすぐ現実に引き戻されてしまうのだ。レトロにまとまったミュージカルなので、ある種のファンタジーとして見るには、些末なことが引っかかり今ひとつ乗り切れない。ファンシーな世界と現実世界の相互作用によって観客を揺さぶるにも少々中途半端で、どうしたかったのか理解しかねる部分が目立った。だったら現実味を一切なくして70年代風ミュージカルとして振り切った方が、より一層本作の世界に入り込めたように感じたのだ。
とまぁ、そんなことをダラダラと言いつつも、本作は10代・20代のso shinyな若者たちの心にはきっと美しく響くはずだと感じている。そうであるべきだと思ってしまうほどに、この作品は若さと純粋さにあふれた究極のオシャレムービーなのである。
so shiny度:★★★★☆
(text:くりた)
『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』
2014/イギリス/111分
作品解説
ベル&セバスチャンのフロントマンであるスチュアート・マードックが脚本・監督を務めた青春ミュージカルムービー。
主人公のイヴは拒食症を患い入院中。しかしひょんなことから知り合ったジェームズ、キャシーらと共に音楽活動を始める。音楽を通して青春を謳歌する3人であったが……。
出演
イヴ:エミリー・ブラウニング
ジェームズ:オリー・アレクサンデル
キャシー:ハンナ・マリー
ジェームズ:オリー・アレクサンデル
キャシー:ハンナ・マリー
スタッフ
監督・脚本:スチュアート・マードック
制作:バリー・メンデル
制作:バリー・メンデル
劇場情報:新宿シネマカリテで絶賛公開中
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