2015年9月10日木曜日

「PFFアワード2015」開催迫る!!!

【ことばの映画館web〜PFFアワード2015特集】



9月12日(土)からPFFアワード2015が開催されます。

普段、映画館で観られる作品とは違う新しい才能と出会うきっかけとなるかもしれません!

ことばの映画館 編集委員でもあり、PFFアワード2015 一次・二次審査員を務められた映画ライターの常川拓也さんに作品紹介文を寄稿していただきましたので、是非お読みください!!




第37回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が9月12日から24日にかけて東京国立近代美術館フィルムセンターにて行われます。その中の自主映画コンペティションで邦画界の登竜門的存在として知られる「PFFアワード2015」では、今年も577本の応募作の中から20本の意欲的でユニークなインディペンデント作品が揃いました。 今回は、そのPFFアワード2015のオススメ作品を紹介します。多少なりとも作品鑑賞のガイドのようなものになれば幸いです。 

常川 拓也(PFFアワード2015セレクション・メンバー/「ことばの映画館」編集委員)




『あるみち』(監督:杉本 大地)
一次審査で出会った時から私が最も推してきた作品です。本作に好感を抱くひとつの理由は、例えば邦画を観て常々感じてしまうセリフや動きの“段取りっぽさ”とは無縁の心地よいナチュラルさでそれらが描かれているからです。そう、監督自身の友人や家族との良好な関係を反映した空気感が素晴らしく、平成に生まれた同年代の男子の自然な会話や雰囲気がたまらない。そのような全く嘘くさくないリアルさは、個人的には『COCKPIT』(2015、三宅唱)ではじめて感じたもので、劇映画でははじめて出会ったような気がしています。その点だけで十分に驚かされました。私にとって、まるで友人や弟の遊んでいる姿を見ているかのような微笑ましさを与えてくれる作品です。
http://pff.jp/37th/lineup/award02.html


『甘党革命 特定甘味規制法』(監督:諸星 厚希)
甘いお菓子を食べることを禁じられた近未来の日本を描くコメディですが、現代の日本を照射するかのような本作は、2015年だからこそ観る意義をさらに感じさせる一本。セレクション・メンバーの結城秀勇氏が講評(http://pff.jp/37th/award/comment.html )で述べられているように、「応募作中もっとも熱い心意気を見せてくれた」作品であり、反骨的で純粋に興奮させられるエンターテインメント性を兼ね備えています。『ゾンビランド』(2009、ルーベン・フライシャー)ではアメリカのお菓子トゥインキーがフィーチャーされていましたが、本作ではスニッカーズが革命のバトンになっていくユーモアも素晴らしい。カメオ出演もする青山真治監督も「私には絶対に撮れない傑作」と絶賛。『あるみち』と同時上映なのもうれしい限り。「我々が欲しいのは、味じゃない。カロリーだ!」
http://pff.jp/37th/lineup/award01.html


『みんな蒸してやる』(監督:大河原 恵)
ほとんど満場一致で支持された、まさに“ワン・アンド・オンリー”な作品です。大河原恵監督独特のユーモアとアイディアが炸裂した本作には、好き嫌いを超えて、彼女の才能を認めざるを得ないような何か凄さがあり、日本語ならではのおかしさの追求とイメージの飛躍がつくづく興味深いと思っています。日常をオフビートに描くコメディ感覚とちょっと奇妙な人間たちも楽しい。監督自身がラストに放つ力強い宣言にもヤられました。タイトルからして最高、みんな蒸してやる!
http://pff.jp/37th/lineup/award16.html


『嘘と汚れ』(監督:猪狩 裕子)
意外にも審査ではおそらく最も賛否が分かれた作品ですが、作品の出来は今回のトップクラスかと思っているほどの力作。どちらにしろかなり見所があるのは確かで、大道具の会社で働く若い女性の労働風景を追った冒頭の長回し撮影から惹きつけられます。個人的には、執拗に彼女の(表情ではなく)背中を捉え続ける長回しから、ひとりの“汚れ”を負った者の苦しむ呼吸がひしひしと伝わってきました。テオ・アンゲロプロスやダルデンヌ兄弟などの作品の影響が感じられる作品ですが、奇しくも同じくひとりの女性の職場での問題を扱った『サンドラの週末』(2014、ダルデンヌ兄弟)ともどこか反響し合うものがあるのではないかと思ったりもします。『きみの信じる神様なんて本当にいるの?』でPFFアワード2013準グランプリ受賞した女性監督の作品。
http://pff.jp/37th/lineup/award05.html


『わたしはアーティスト』(監督:籔下 雷太)
特に女性審査員からとても支持されました。うまく作られている作品で、その点は全員が認めるところでした(今の完成度か将来性かで大いに議論になりました)。自意識の強さと思い焦がれる同級生の男の子への気持ちの狭間で揺れる女子高生が、レンタルDVDショップで偶然手に取る『E.T.』の宣伝ポップには、「宇宙人と地球人だって仲良くなれる!」と書かれている。そう、これは他人と馴染めず、自分のことを「宇宙人」と思ってしまっている少女の小さな物語であり、その自意識の感覚はやはり痛くもとても愛らしいと思うのです。
http://pff.jp/37th/lineup/award20.html


『大村植物標本』(監督:須藤 なつ美)
バニラアイスとタバコ──甘さと苦さ──正反対かのように思えるふたつを持って歩く少女の姿が印象に残る。祖父の遺した植物標本に触れ、その後、その記憶を辿るかのように森で植物を探し歩く少女。あっと驚く最後を含め、軽やかさの中にどこか野心的な試みと問いが隠されているように思えました。
http://pff.jp/37th/lineup/award07.html


『海辺の暮らし』(監督:加藤 正顕)
オフビートでシュールなコメディの中、震災後の海辺の町から出たく、外国に憧れて英語かぶれになっている天涯孤独な主人公のキャラクターが興味深い。絶滅危惧種ネコムシを密猟する彼女と、それを監視する男、どこか示唆に富んだ魅力があるように思います。「本当に怖いのは、この街から一生出ることもなく、潮風で錆びついてしまうことよ」
http://pff.jp/37th/lineup/award06.html 


『したさきのさき』(監督:中山 剛平)
クラスメイトの男の子に片思いする高校生の女の子が、こっそり彼の飲みかけのコーラやリコーダー、机を舐めていきます。そのエスカレートしていく様が周囲にバレないかハラハラ見せる演出がちゃんと出来ていて、最後までダレさせることなく見せきります。彼女に対して、そして「変態」に対して向ける作り手のまなざしにとても好感を覚えました。
http://pff.jp/37th/lineup/award11.html



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以上、常川拓也さんからの紹介文でしたが、みなさんは気になる作品はありましたか?いやはや どの作品も楽しみですね!






ぴあフィルムフェスティバル(PFF)
"映画の新しい才能の発見と育成"をテーマに、1977年にスタートした映画祭。いままでに数々の監督を排出している。現在では、公募した作品から入選作品を選出する映画コンペティション「PFFアワード」を中心に、特集上映や、トークショーなどのイベントも行われている。また、PFFアワードでグランプリ等の賞を受賞した監督はPFFスカラシップの権利を獲得でき、劇場用映画監督デビューへの道が開かれる。

公式ホームページ:http://pff.jp/jp/index.html
東京会場 上映スケジュール2015年9月12日(土)〜24日(木)※月曜休館
会場:東京国立近代美術館フィルムセンター


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