2015年11月30日月曜日

第16回東京フィルメックス 特集上映《ツァイ・ミンリャン特集》上映前舞台挨拶 レポート text 井河澤 智子

2015年11月28日、有楽町スバル座。
第16回東京フィルメックス《ツァイ・ミンリャン特集上映》の幕が上がった。

オープニングを飾るのは、ツァイ・ミンリャン監督(以下、ツァイ監督)劇場映画デビュー作『青春神話』(1992)。
上映に先立ち、ツァイ監督と、彼の「分身」ともいうべき俳優リー・カンション氏(以下、リー氏)が舞台挨拶を行った。

写真左より、ツァイ・ミンリャン監督とリー・カンション氏

ツァイ監督:

皆さんこんにちは。
時間がたつのは本当に早いもので、わたしがこの映画を皆さんにお見せしたのは1992年か93年のことでした。
それから東京に来るご縁ができました。
……僕たち、見た目は(公開当時に比べて)そんなに歳を取ったとは思っていないんですけど……。


(会場からあたたかな笑いが)


リー氏:

 この作品は、僕とツァイ監督が初めて仕事をした作品です。
その時の東京国際映画祭で銅賞をいただくことが出来たのを覚えています。
(第6回東京国際映画祭ヤングシネマ1993コンペティション部門 東京ブロンズ賞受賞)
また今回ご縁があって、ツァイ監督の特集上映を開くことができて、とても嬉しく思っています。
皆さん、22年前の、若い頃の僕の姿をご覧頂けると思います。気に入ってくださるといいなと思います。


22年前の作品である、ということで、
「『青春神話』を初めて見るという人」という呼びかけに多数の挙手が。


ツァイ監督:

1992年には、まだ生まれていない人もいるかもしれませんね。
『郊遊 ピクニック』(2013)を撮ってから、ありがたいことに、僕の映画を観る若い人たちが増えてきました。
当時の客層を考えると、若い人が僕の作品を観て、キャッチアップしてくれることは、とても嬉しいことです。


さらにツァイ監督は、2003年製作の短編『歩道橋』が修復される計画を明かし、自分の作品が埋もれることなく、蘇った姿で観てもらえることはとても嬉しいことである、と語った。

この日の朝、有楽町朝日ホールにおいて、最新作『あの日の午後』が上映されたツァイ監督。ツァイ監督とリー氏が延々語り合う、淡々とした、しかし濃密な時間の流れる作品であった。
Q&Aでは、現在、リー氏の体調が思わしくない(1997年公開の『河』の撮影時期、リー氏は首の調子が極めて悪かったということであるが、その頃と同じくらい首の調子が悪い)ということが語られた。
そして、同日の午後上映された『青春神話』において、リー氏は鬱屈した、内に秘めた暴力性をもてあます少年そのものであった。私たちは、同じ日に同じ俳優の22年間を観たことになる。しかし、先ほど舞台に登壇していたリー氏の、貫禄と儚さを同時に纏うような独特の雰囲気は、当時も今もほとんど……それこそ監督が言ったように「変わっていない」ものであり、そしてこれからも変わることがないであろう、と感じさせられた。
近年、ツァイ監督も体調が思わしくないと伝えられていたが、今は肌ツヤも良く元気そのもの。リー氏の体調の早い回復を祈るとともに、お二人でこれからも素晴らしい作品を製作していただきたいと、心から願う次第である。

ツァイ・ミンリャン監督特集上映は11月28日~12月4日、有楽町スバル座で行われる。

(text、写真:井河澤 智子)

関連レビュー:

第16回東京フィルメックス

2015年11月21日(土)〜29日(日)まで開催。「映画の未来へ」--いま世界が最も注目する作品をいち早く上映する国際映画祭。アジアの若手によるコンペ部門、最先端の注目作が並ぶ特別招待作品の上映。特集上映のひとつはフランスのピエール・エテックス。

公式ホームページ

特集上映 ツァイ・ミンリャン

『郊遊 ピクニック』(2013)で、長編映画の製作からの突然の引退を宣言してファンを驚かせたツァイ・ミンリャン監督。
世界に衝撃を与えたデビュー作『青春神話』(1992)とキャリア初期の傑作に加え、日本での劇場未公開作品『ヴィザージュ』(2009)、および日本初上映の短編作品などを上映。
ツァイ・ミンリャン監督作品の魅力にどっぷりハマりましょう!
※チケット発売方法が他プログラムと異なりますのでご注意下さい。

「特集上映:ツァイ・ミンリャン」は開催日程、会場、チケット発売方法が他と異なります。
会期:11/28(土)〜12/4(金) 各日2回上映
会期:有楽町スバル座
チケット発売方法:前売券は劇場窓口での取り扱いのみ(有楽町スバル座、有楽町朝日ホール)
※ticket boardでの取り扱いはございません。(公式ホームページより)

詳しくは公式ホームページの《特集上映 ツァイ・ミンリャン》のページをご参照下さい。


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