2016年12月14日水曜日

アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016 アンコール!



<2016アピチャッポン・イヤー>を締めくくる、アピチャッポン・ウィーラセタクンの特集上映がアンコール開催!

その名も「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016 アンコール!」

(2016年12月17日よりシアター・イメージフォーラムにて開催されます)

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<2016アピチャッポン・イヤー>のラストを飾る特集上映。

『ブンミおじさんの森』(2010)で2010年カンヌ国際映画祭・パルムドール(最高賞)に輝いたタイの天才監督にして美術作家でもあるアピチャッポン・ウィーラセタクン。今年は1月に幻の傑作『世紀の光』(2006)初公開と特集上映<アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016>が開催され、3月には最新作『光りの墓』(2015)の公開、また、各地での展覧会やワークショップや「さいたまトリエンナーレ2016」への参加、きたる12月13日からは東京都写真美術館での個展スタートと、映画に美術にまさに<アピチャッポン・イヤー>。そしてそのラストを飾るのが本特集上映<アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016アンコール!>です。


全長編作と貴重な共同監督作や関連作も上映し、さらに多面的に。

今回は、これまでの全劇場長編作とともに、単独監督作とはまったく違う異色の共同監督作であるモンド西部劇ミュージカルコメディ『アイアン・プッシーの大冒険』(2003)を上映。さらに関連作として、アピチャッポンの故郷でありその映画の主な舞台であるタイ東北部イサーン地方を描いたタイ映画史に輝く名作『トーンパーン』(1976)、『東北タイの子』(1982)も上映。全9作を上映し、より多面的により深く、アピチャッポンの映画世界に触れることができます。



アピチャッポン監督も来場。何回見ても発見がある作品群をぜひスクリーンで。

また、開催期間中には監督本人が来場し、舞台挨拶やQ&Aも予定。上映作品を網羅したパンフレットも販売される。映画館の闇は、アピチャッポンが繰り返し描くタイ東北部イサーン地方の森へとつながるタイムマシーン。闇の中に身を沈め、ふと目を覚ませばアピチャッポンと森を彷徨っている、そんなスリリングな体験を映画館でぜひ!

12/13からは東京都写真美術館の個展。12/17からは本特集上映。美術を見てから映画を見るか、映画を見てから美術を見るか。<2016年アピチャッポン・イヤー>のラストにふさわしくたっぷりとお楽しみください。

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上映作品解説


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①『真昼の不思議な物体』 

原題:Mysterious Object at Noon

2000年|タイ|83分|モノクロ|35mm

山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション 最優秀&NETPAC特別賞受賞/全州国際映画祭グランプリ受賞


©Kick the Machine Films  提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭


タイ東北部の村で行商人の女性が、撮影クルーに促され、一つの架空の物語を語り始める。その続きを象使いの少年たち、伝統演劇の劇団員たちなど、様々な人々がリレー形式で即興的に語り継ぎ、物語は二転、三転しながら思わぬ方向に進んでいく。驚くほどの自由なイマジネーションと同時に緻密に考えられた構成で、世界を仰天させた記念すべき長編初監督作品。

提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭 
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター


奥平 詩野
映画『真昼の不思議な物体』評 

今泉 健
映画『真昼の不思議な物体』評 

井河澤 智子
映画『真昼の不思議な物体』評

長谷部 友子
映画『真昼の不思議な物体』評 

髙橋 雄太
映画『真昼の不思議な物体』評


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②『ブリスフリー・ユアーズ』 

原題:Blissfully Yours

2002年|タイ|125分|カラー|35mm

カンヌ国際映画祭ある視点賞/東京フィルメックス映画祭最優秀作品賞/テサロニキ映画祭グランプリ/ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭監督賞&国際批評家連盟賞ほか

©Kick the Machine Films  提供:Kick the Machine Films

ミャンマーからやって来た不法労働者のミン、そのガールフレンドの若い女性ルン、ミンを何かと気づかう中年女性オーン。ミンとルンとは森の中をさまよいながらひと時を一緒に過ごす、偶然同じ時に不倫相手と森に入ったオーンは姿を消した相手の男を探すうちにミンとルンと遭遇する。ジャン・ルノワール監督の不朽の名作『ピクニック』にもたとえられた至福の映画。

提供:Kick the Machine Films 
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター


高橋 秀弘
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

井河澤 智子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

大久保 渉
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

岡村 亜紀子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 


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③ 『アイアン・プッシーの大冒険』

原題:The Adventure of Iron Pussy

2003年|タイ|90分|カラー|デジタル

監督:マイケル・シャオワナーサイ、アピチャッポン・ウィーラセタクン


©Kick the Machine Films  提供:GMM GRAMMY Public Company Limited

フィラデルフィア生まれのタイ人現代美術アーティスト、マイケル・シャオワナーサイとの共同監督作。シャオワナーサイ扮する女装のスパイ“アイアン・プッシー”は、怪しい富豪の屋敷にメイドとして潜入。大騒動をまきおこす。他のアピチャッポン作とは全く違う、ツッコミどころ満載の“モンド西部劇ミュージカルコメディ”。自身は、ビデオアート・プロジェクトの一つと位置づけ、要所要所のショットにアピチャッポンらしさを発見するのも楽しい。

提供:GMM GRAMMY Public Company Limited
協力:boid

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④『トロピカル・マラディ』 

原題:Tropical Malady

2004年|タイ、フランス、イタリア、ドイツ|118分|カラー|35mm

カンヌ国際映画祭審査員賞/東京フィルメックス映画祭最優秀作品賞/サンパウロ国際映画祭批評家賞/カイエ・デュ・シネマ2004年ベスト1ほか


©Kick the Machine Films  提供:Tamasa Distribution

愛し合う二人の青年の日常がみずみずしく描かれる前半から、一転、不穏な空気に包まれる後半。冒頭には日本の作家、中島敦の「山月記」の一節が引用され、アピチャッポン作品を貫く重要な要素の一つである“変容”が最も顕著に表現されている。観客に森の中に迷い込んだかのような感覚を与える撮影と音響は圧巻。カイエ誌ベスト1にも輝いた傑作。

提供:Tamasa Distribution 
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター

長谷部 友子
映画『トロピカル・マラディ』評

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⑤『世紀の光』 

原題:Syndromes and a Century

2006年|タイ、フランス、オーストリア|105分|カラー|DCP

ヴェネチア国際映画祭公式出品/ドーヴィル・アジア映画祭グランプリ/フリブール国際映画祭スペシャル・メンションほか


©Kick the Machine Films  提供・配給:ムヴィオラ

今年日本で初公開された、ファンの間で特に人気が高い作品。映画は2つのパートに分かれ、前半は地方の緑豊かな病院、後半は近代的な白い病院が舞台となる。登場人物の多くも重なり、医師の恋の芽生えなどのエピソードは2つのパートで反復され、夢見ているような奇妙な感覚に誘われる。撮影中に多くのスタッフが恋に落ちたというエピソードを持つ、“微笑み”と“驚き”の傑作。

提供・配給:ムヴィオラ


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⑥『ブンミおじさんの森』 

原題:Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives

2010年|イギリス、タイ、ドイツ、フランス、スペイン|114分|カラー|35mm

カンヌ国際映画祭パルムドール/アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞/カイエ・デュ・シネマ2010年ベスト1ほか

©Kick the Machine Films  提供:シネマライズ 配給:ムヴィオラ

腎臓の病に冒され、死を間近にしたブンミは、妻の妹ジェンをタイ東北部の自分の農園に呼び寄せる。そこに19年前に亡くなった妻が現れ、数年前に行方不明になった息子も姿を変えて現れる。やがて、ブンミは愛するものたちとともに森に入っていく。美しく斬新なイマジネーションで世界に驚きを与えた、カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作。

提供:シネマライズ 配給:ムヴィオラ



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⑦『光りの墓』 

原題:Cemetery of Splendour

2015年|タイ、イギリス、フランス、ドイツ、マレーシア|122分|カラー|DCP

カンヌ国際映画祭<ある視点>部門出品/アジア太平洋映画賞最優秀作品賞/国際シネフィル協会賞最優秀未公開映画賞ほか


© Kick The Machine Films / Illuminations Films (Past Lives) / 
Anna Sanders Films / Geißendörfer Film-und Fernsehproduktion /
Match Factory Productions / Astro Shaw (2015) 

提供・配給:ムヴィオラ


タイ東北部。かつて学校だった仮設病院。原因不明の“眠り病”にかかった兵士たち。ある日、病院を訪れたジェンは、前世や過去の記憶を見る力を持った若い女性と知り合い、その病院の場所が、はるか昔に王の墓であったと知り、兵士たちの眠り病に関係があると気づく。映画作家としてのさらなる進化を感じさせ、またタイの政治状況に対する想いも込められた傑作。

提供・配給:ムヴィオラ


長谷部 友子(寄稿・neoneoWEB)
映画『光りの墓』評

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関連上映作品


アピチャッポン映画にとって、その故郷タイ東北部イサーン地方は特権的な場所。かつてカンボジアとラオスという異なる帝国から成り立ち、バンコクとは全く違う文化を持っていたイサーン。貧しい地域であり、60〜70年代にはその森に共産主義が逃げ込み、共産主義者狩りの舞台ともなった場所。
アピチャッポンの土地の記憶を掘り下げる為に、ぜひとも見ておきたいタイ映画史の名作2本が上映されます。


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⑧『トーンパーン』

原題:Tongpan

1976年|タイ|63分|モノクロ|デジタル

監督:スラチャイ・ジャンティマートン、パイジョン・ライサグン、ユッタナー・ムクダーサニット


© The Isan Film Group  提供:Multimedia Thailand


75年に実際にあったダム建設問題をドラマ化したドキュ・ドラマ的な白黒16mm作品。ダム建設で土地を失った農夫のトーンパーンは妻と2人の息子を抱え、ムエタイの試合に出たり、サムロー(人力三輪車)の運転手をして何とか暮らしていたが……。民主化運動が高まった当時、共産主義者が逃げ込んだイサーンが舞台なので、政府により上映が禁止になったという問題作だが、イサーン農民の貧しさ、町の風俗などのリアルで詩情ある描写は必見。後年、『メナムの残照』などを残した巨匠ユッタナー・ムクダーサニットの貴重な初期作でもある。

提供:Multimedia Thailand 
協力:boid

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⑨『東北タイの子』

原題:A Son of the Northeast

1982年|タイ|130分|デジタル

監督:ウィチット・クナーウット 原作:カムプーン・ブンタウィー


© Five Star Production Co., Ltd.  提供:Five Star Production

東北タイに生まれ、行商人、日雇い労働、刑務所の獄吏など様々な職を経て作家となり、晩年は国民的作家となったカムプーン・ブンタウィーの同名小説の映画化。当時タイで大ヒットし、映画賞も独占した。干上がった地で貧しく暮らすイサーン農民が、遠く離れた川まで魚を獲りに牛車のキャラバンで旅に出る姿を描く。見所は何と言ってもイサーンの知られざる生活風景、日本の伝承話にも通じる大らかな性の描写も素晴らしい。83年にマニラ映画祭で審査員だった大島渚が絶賛したのも納得の傑作。

提供:Five Star Production 
協力:boid

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アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016アンコール!

開催日程
2016年12月17日(土)~1月13日(金)<4週間>

会場
シアター・イメージフォーラム 
(東京都渋谷区渋谷2-10-2)

上映作品
『真昼の不思議な物体』『ブリスフリー・ユアーズ』『アイアン・プッシーの大冒険』
『トロピカル・マラディ』『世紀の光』『ブンミおじさんの森』『光りの墓』(以上アピチャッポン監督作)

関連上映
『トーンパーン』(ユッタナー・ムクダーサニットほか監督)、『東北タイの子』(ウィチット・クナーウット監督)

公式ホームページ
http://www.moviola.jp/api2016/woods2/index.html

監督トークイベント
12月19日(月)15:30の回『光りの墓』上映後&18:30の回『世紀の光』上映前
*トークの日時はやむを得ぬ事情により変更となる場合があります。

配給
ムヴィオラ:http://www.moviola.jp

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【ことばの映画館の批評家による<アピチャッポン監督作品>映画評一覧】


井河澤 智子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 
映画『真昼の不思議な物体』評 

今泉 健
映画『真昼の不思議な物体』評 

大久保 渉
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

岡村 亜紀子
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 

奥平 詩野
映画『真昼の不思議な物体』評 

佐藤 奈緒子
映画『世紀の光』評 
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

高橋 秀弘
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

高橋 雄太
映画『世紀の光』評 
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評 
映画『ブンミおじさんの森』評
映画 アートプログラム<中・短編集>評
映画『真昼の不思議な物体』評

長谷部 友子
映画『トロピカル・マラディ』評
アートプログラム『国歌』評 
映画『真昼の不思議な物体』評 
映画『世紀の光』評 
映画『ブンミおじさんの森』評
映画『ブリスフリー・ユアーズ』評

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【寄稿・ドキュメンタリーマガジンneoneo・ウェブサイト「neoneo web」】

長谷部 友子
「あなたに起きていてほしい」-アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『光りの墓』

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2016年12月10日土曜日

映画『幸せなひとりぼっち』評textミ・ナミ

「幸せな人生のしまい方」


主人公のオーヴェはいつも不機嫌である。頼まれもしない町内の見回りに毎日躍起となって、規則を守らない住人を追いかけ回しては小言ばかりだ。最近はホームセンターのレジ係を説教して、周囲の反感を買っていた。妻のソーニャは半年前に亡くなり、ある日、長年勤めた鉄道局からもとうとう解雇される。オーヴェは意外と小心なので、悲観のあまり思わず首を吊ろうとしたその瞬間、新しく隣へ越してきた家族の騒々しさに、飛び出して行って怒鳴り散らす。以来、イラン移民の女性で快活な妊婦パルヴァネは何かとオーヴェを頼り、ペルシャ料理を振る舞う。彼女のちょっぴりドジな夫、二人の娘もフレンドリーに接する。オーヴェの気持ちはその後も死へと傾き、そのたび周りの騒々しさに邪魔される(しまいにネコまで転がり込む!)が、次第に凍った心には灯がともっていく。ある時、オーヴェはパルヴァネに、自分のこれまでの人生を打ち明ける。幼い頃の母の死。寡黙だが愛情深い父の思い出。人生の信条が決まった青年時代。最愛の妻ソーニャとのまぶしい日々。そして、夫婦の運命を大きく変えたあの日のことーー。

©Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.


オーヴェの自殺未遂だけでなく、かつて町長選や自家用車の車種をめぐって小競り合いを繰り広げた友人ルネは、今や難病で笑うことすら困難であるなど、この映画には影の部分も多い。だがたとえばオーヴェの自殺は、習い性の癇癪でいつも失敗に終わるなどギリギリなコメディになっていて、悲壮な印象はなく思わず吹き出してしまう。このあたりのさじ加減に、多くのコメディ映画の脚本と演出をつとめてきたというハンネス・ホルム監督の手腕が大いに発揮されているのだろう。

©Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.

パルヴァネはオーヴェに頼み込み、自動車の運転を習得しようと奮闘するが、公道での練習の際に軽いパニックを起こしてしまう。オーヴェはそこで、こんな風に言って聞かせる。あなたは多くの困難と苦労を乗り越えて、さらに車の運転まで覚えようとしている。自信を持ちなさい、と。融通が利かないオーヴェだが、周囲に流されて「規範」からはみでることを嫌う性分なだけなのだ。彼のパルヴァネへの叱咤は、表面的に優しい言葉よりもずっと暖かい。そもそもこの映画そのものが、不寛容とは無縁の世界のありようを指し示している。劇中人物たちが宗教や性別、民族やセクシャリティ(性的指向)の隔てを越え、自分とは異なる存在を理解し合い、連帯する姿が描かれている本作は、誰かへの不寛容さばかりが充満した現代諸相への、ささやかだがずしりと重たいカウンターパンチのようだ。

スウェーデンの伝統的国産車サーブのエンジンを眺めながら、オーヴェの父は「車が動くというのは、そう簡単な仕組みではない」と息子に語りかけた。本作に沿って言い換えるなら、「人間が生きるというのは、そう簡単な仕組みではない」。その「生きる」というのは、ただ人間の心臓が動き、呼吸するというフィジカルな意味だけでないように感じる。命ある者の行き着く先が必ず死であるならば、それを悲しむべきものとしてではなく、過ぎ去った生の時間を喜びながら終わっていくのが、幸福というのだろう。過去の怒りと悲しみに沈みきったまま死を迎えようとしたオーヴェを、幾度となく「生かした」、さしのべられた手。それはきっと、パルヴァネのものだけではなかったはずだ。

©Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.


頑固オヤジの愛され度:★★★★★
(text:ミ・ナミ)



『幸せなひとりぼっち』

2015年/スウェーデン/カラー/DCP5.1ch/シネマスコープ/116分/
原題:EN MAN SOM HETER OVE
スウェーデン語・ペルシア語/字幕翻訳:柏野文映/後援:スウェーデン大使館

作品解説
スウェーデン映画史上記録的大ヒット!国民の5人に1人が観た国民的映画

「人は一人で生きられるのか」を問う感涙必至のヒューマンドラマ

2015年のクリスマスにスウェーデンで封切られると、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)を抑え、興行成績1位にランクイン。その後、公開5ヶ月を越える大ロングランになっただけではなく、世界17ヶ国での公開も決定し、ドイツやノルウェー、韓国でもヒットを飛ばしている。そんな本作の主人公は、頑固な老年男・オーヴェ。いつも不機嫌で人付き合いの苦手な彼が、隣人一家と交流する姿を通して、「人は一人で生きられるのか」「人生とは何か」を問うヒューマンドラマ。自らの正義を貫く彼だからこそ迎えられた幸せな結末は、多くの観客の胸を打ち、スウェーデンのアカデミー賞と言われるゴールデン・ビートル賞で主演男優賞と観客賞をダブル受賞!北欧発の感動作がいよいよ日本に上陸。

キャスト

オーヴェ:ロルフ・ラスゴード
オーヴェ(青年時代):フィリップ・バーグ
ソーニャ:イーダ・エングヴォル
パルヴァネ:バハー・パール

スタッフ
脚本/監督:ハンネス・ホルム  
原作:フレドリック・バックマン  
撮影:ゴラン・ハルベルグ
編集:フレドリック・モルヘデン  
音楽:ガウト・ストラース  
製作:アニカ・ベランデル
配給・宣伝:アンプラグド

劇場情報
2016年12月17日(土) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

公式ホームページ
http://hitori-movie.com/

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【執筆者プロフィール】

ミ・ナミ:MI nami

架空の居酒屋「ミナミの小部屋」店主にして映画記者、もしくは映画館映写係。
「韓国映画で学ぶ社会と歴史」(2015年、キネマ旬報社)に寄稿。
韓国映画の情報サイト「シネマコリア」でも定期的に執筆中。@33mi99http://twitter.com/@33mi99


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2016年12月9日金曜日

映画『カレーライスを一から作る』評text高橋 雄太

「カレーライスから考える 」


カレーライス。おそらく日本で最も一般的な料理の一つだろう。

カレーライスは多くの店で提供されており、また特に料理好きでない私でも、食材とルーを買って作ることがある。だが、スーパーで売られているのは収穫済みの野菜であり、動物の形態を残していない肉である。市販のルーを眺めても、それがどのように作られたのか、その中に何が含まれているのか、想像することは難しい。お店で食べれば、調理の過程もわからない。よく知っているようで、よく知らないカレーライス。このありふれた料理が、私たちの生について考えるきっかけになる。

映画が追うのは、医師であり「グレートジャーニー」の探検家としても知られる関野吉晴氏が、武蔵野美術大学で担当するゼミである。関野は、学生たちとともにカレーライスを一から作ることを目指す。すなわち、田んぼで米を、畑で野菜やスパイスを、海から塩を、土から器を作り、飼育小屋で動物(ホロホロ鳥と烏骨鶏)を育てる。

私たちが、「作らない」ことで手にした利便性、効率性、お手軽さ。それらを一旦捨て、自分たちの手で作る。自分たちの身の回りにあるものがどこから来るのか。人や社会がどのように私たちとつながっているのか。それを知ることが生きる力になると、関野は語る。「カレーライスを一から作る」ことは、カレーライスだけでなく、私たちの生活の源泉を遡ることでもあるのだ。

農業にも飼育にも不慣れな学生たちは悪戦苦闘し、葛藤する。関野ゼミの畑に比べ、化学肥料を使う他の畑の方が野菜の生育が早い。ゼミ生の一人は化学肥料を使うべきか悩み、結局は堆肥のみとする。「作る」作業であるはずの農業にも、自分たちで「作らない」化学肥料という手段がある。さらに、私を含め農業をしない多くの人々は、食糧に関してはほぼ自ら作ることがない。他人の作ったものに支えられ、何重もの利便性を享受して生きている。関野ゼミでは「作らない」を「作る」にしていくことで、現代の生活を支えるものをゼミ生たちに、そして私たちに自覚させていく。

動物の飼育からも見えてくるものがある。予定通り鶏肉入りのカレーライスを作るためには、飼育した動物を屠る必要がある。学生たちは手作りで小屋を作り、餌を与え、様子をノートにつけるなど、丁寧な飼育をしてきた。鳥の方でもゼミ生になついているようで、膝や肩に乗ってくる。 「かわいいから殺したくない」、「食べ物として育てたのだから屠る」など議論を交わした末、ゼミ生たちは鳥を屠る。

解体された鳥の体内には、餌となった植物が残っている。人間はその鳥を食べる。人間も他の動物も、いのちを食べて生きているのだ。その「いのち」を「かわいいペット」や「食べ物」とみなすことは、人間が勝手に決めることである。また、関野がゼミ生に指摘するように、同じ「いのち」であるはずの動物と植物を区別することも人間の都合である。「いのち」とともに生きること。それは「いのち」を犠牲にすることもあり、愛することもあるという人間の立場、身勝手さを自覚することなのかもしれない。

さて、揚げ足をとるつもりはないが、ゼミの活動は厳密には「一から」ではない。包丁、鍋、鳥の雛、植物の種子などは、ゼミの外部から入手したものである。「カレーライスを一から作る」ことの前に、「一から」以前がある。このことから、私たちが「一から」生きるのが難しいことに気づかされる。まして、分業も都市化も進み、土や動物に触れることも少ない現代の日本では、なおさら難しいだろう。かく言う私も、農業や飼育の経験はない。この映画を見て、貴重な経験をするゼミ生たちを羨ましく思った。せめて、生活を支えるものと自分たちの立場を想像することにしよう。

最後に完成したカレーライス。実際の味はともかく、見ていると食欲をそそられる。鑑賞後の私の食事はカレーライスだった。もちろん鶏肉入り。

(text:高橋雄太)





『カレーライスを一から作る』

2016/96分/日本 


作品情報
医師であり探検家でもある関野吉晴氏が、武蔵野美術大学で開催した「関野ゼミ」。その内容は「カレーライスを一から作る」こと。本作はカレーライスが「一から」出来上がるまでの記録したドキュメンタリー映画である。

スタッフ
監督:前田亜紀
プロデューサー:大島新
音楽:U-zhaan

劇場情報
ポレポレ東中野にて公開中〜12月16日まで延長決定!

公式ホームページ
http://www.ichikaracurry.com


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【執筆者プロフィール】

高橋雄太:Yuta Takahashi

1980年生。北海道出身。映画、サッカー、読書、旅行が好きな会社員。映画祭のシーズンも終盤ですね。今シーズン見た中では東京国際映画祭の『ノクトラマ/夜行少年たち』、東京フィルメックスの『モンテ<山>』が特に好きです。

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2016年11月25日金曜日

映画『エヴォリューション』ルシール・アザリロヴィック監督インタビューtext長谷部 友子、大久保 渉


Photo by Masataka Miyamoto 

「ことばの映画館」は、フランス映画祭2016のために6月に来日されたルシール・アザリロヴィック監督に11月26日(土)より公開される監督作『エヴォリューション』についてインタビューしました。見終わっても謎ばかりの『エヴォリューション』、監督は何を考えて映画を制作したのか。ぜひインタビュー記事をご覧ください。

*インタビュー内容はネタバレを含みます。






――とても美しい映像の作品でした。世界観も緻密に構築されていて、現実世界とはどのようにリンクしているのでしょうか。それとも全く切り離されたものなのでしょうか。

想像の世界と現実の世界は表裏一体だと思います。私はこの映画をスタジオで撮影したくありませんでした。本当にそこにある島、そこにある村、そういう現実性や具体性がどうしても必要だと思ったのです。想像の世界であっても、実際にある病院で撮影したかったのです。想像の世界と現実の世界というのは、私の中では繋がっているのです。







――水中のシーンにはこだわりがあったと思うのですが、どのように撮影したのでしょうか。カメラマンに対して何かリクエストはしましたか? 

撮影監督とはよく話し合い、私のやりたいことをよく理解してくれて、構図や照明も全面的に信頼していました。撮影場所はカナリア諸島のある島だったのですが、カメラを置くだけで画になるような場所で、ロケ地に助けられたと思います。

予算の都合上、カメラをあまり移動できなかったのですが、それがかえっていい効果を与えているのかもしれません。構図に関しては若松孝二監督や大島渚監督といった日本映画を参考にしたかったので、撮影監督に撮影前に勉強してくださいとお願いしました。

Photo by Masataka Miyamoto 




水中のシーンの撮影は、ダイバーの資格を持ったドキュメンタリーのカメラマンにお願いしました。カナリア諸島の自然に詳しい人で、こういう海藻や岩があるという知識がとても役立ちました。水中での撮影なので、ビデオで確認しながら撮ることができなかったので、私が事前に「こういう画が撮りたい」とスケッチを描いて説明し、海に潜ってもらい、映像をビデオで確認して、また潜ってという繰り返しで、とても大変な作業でした。








ドキュメンタリーのカメラマンの方なので、どうしても生き物のドキュメンタリーっぽくなってしまって。私はそういうものを全然求めていなかったので、「お魚はいいから!」みたいな時もありました(笑)。

お魚はいらないので、もっとこう幻想的な、海の汚れた部分を私は撮りたいのだという意思の疎通が少し難しかったです。最終的にはよく理解してくれて、よい映像が撮れました。







――子どもが主人公の映画ですが、どのように撮影をしたのでしょうか。現場では張りつめていたのか、反対に和気藹々と笑いながら進めたのか撮影時の雰囲気を教えてください。 

子どもっていうのは、とても面白いですね。もちろん笑いはありました。撮影現場は暗く深刻ということは全然なかったです。主人公を演じたマックスくんは、よく笑うとても明るい子で、だからこそ大変だった面もあります。なるべく真剣に、集中して表情を殺して撮影していかなければなりませんでしたから。




Photo by Masataka Miyamoto 

ストーリーは彼らにはどうでもいいみたいで、子どもたちはとにかく撮影に参加することが楽しくてしょうがないようでした。例えば子どもたちは水槽に大変興味を示し、水槽のシーンに出られるということがちょっと特権的のようでした。最後に具合が悪くなって男の子が吐くシーンがありましたが、「早く吐くシーンをやりたい!」と言っていました。子どもたちにとっては、そういう気持ち悪いシーンが逆に楽しいみたいでした。







――少年は成長して大人になるでもなく、女性も妊娠して子どもを出産するでもなく、全く違う生態系のようなものが描かれているように思えました。この映画の中で、変容というものがどういう意味を持っているのか教えてください。

そうですね。映画の最初のイメージについてお話すればわかっていただけると思います。映画の最初のイメージはお腹が痛い少年が病院に運ばれるというものでした。少女ではなく少年をイメージしたのは、少女であれば妊娠して出産するというのは当たり前すぎて面白みに欠ける、少年であればちょっとアブノーマルでより悪夢的な感じになるという直感があったからだと思います。







映画にでてくる少年たちは、大人の男性が不在なので、大きくなったら自分たちがどういう姿になるのかわからないまま成長しなければなりません。大人の女性たちも妊娠して出産することを自分たちではせずに、子どもたちを利用して種の再生のようなことをしていくわけです。まあ確かに不思議な世界だと思います。







――今回の作品を製作されて、ご自身の中で何か変化はありましたか? この作品は監督の人生の中でどのような位置づけになったのでしょうか。

まだ自分の中の変化について、はっきりとは言えません。ただこの映画を撮るのに、予算の関係でとても長い年月がかかっています。予算が限られなかなか実現しないにも関わらず、どうしてそこまで執着したのか自分でも不思議でしたが、見てくれた人たちの反応を聞いて、少しずつ分かってきた段階です。




Photo by Masataka Miyamoto 

自分の子どもの頃の潜在的な不安だとかそういったものを、この映画を撮ることによって、どこかで解消されてカタルシスみたいなことがあったのかなと。すごく個人的な映画だったのだなと思います。そういった解放感は感じています。次回作では、今度は大人を主人公にしてみようと思っています。





2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテで公開される『エヴォリューション』。悪夢のような美しい映画を見に劇場へ!




Photo by Masataka Miyamoto 


(text:長谷部友子、大久保渉、photo:宮本匡崇)

© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015


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『エヴォリューション』
原題:Evolution

2015年/フランス/81分

作品解説
『エコール』の監督が贈る、最も美しい“悪夢”。
少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。“エヴォリューション(進化)”とは何なのか…?ギャスパー・ノエの公私にわたるパートナーであり、森で暮らす少女たちを描いた『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督が贈る、最も美しい“悪夢”。映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等大きな反響を巻き起こした。

キャスト
マックス・ブラバン
ロクサーヌ・デュラン
ジュリー=マリー・パルマンティエ

スタッフ
監督:ルシール・アザリロヴィック
配給:アップリンク

公式ホームページ
http://www.uplink.co.jp/evolution/

劇場情報
2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開



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【執筆者プロフィール】

長谷部友子 Tomoko Hasebe

何故か私の人生に関わる人は映画が好きなようです。多くの人の思惑が蠢く映画は私には刺激的すぎるので、一人静かに本を読んでいたいと思うのに、彼らが私の見たことのない景色の話ばかりするので、今日も映画を見てしまいます。映画に言葉で近づけたらいいなと思っています。



大久保渉 Wataru Okubo

1984年、座間市生。映画活動中。ライターとして『ことばの映画館』、『映画芸術』、『FILMAGA』、『トランシネマWEB』、その他映画系媒体にて執筆中。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭事務局にアシスタント勤務(2016年4~7月)。インディペンデント映画の宣伝に従事。その他、KAWASAKIしんゆり映画祭、インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン、各種映画祭にて活動中。
Twitterアカウント:@OkuboWataru

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2016年11月24日木曜日

映画『エヴォリューション』評text大久保 渉、長谷部 友子


「波」


諸星大二郎先生の漫画の一編に、美しいものを見たら死ぬ(自殺する)人たちがいた。死ぬほど感動したから。幸せなまま死にたいから。分からないでもない。
ただそうすると、不気味なもの、おぞましいものはなんなのか。恐怖は、人に生を思い起こさせるものなのか。行き場のない暗闇に閉じ込められたとき、光を求めてあてどなく手足を振り回してしまうのは私だけだろうか。

けれども、たとえ陽の光に包まれたとしても、その瞬間、またすぐに不安を感じてしまうことだろう。幸せが失われることへの恐怖が、頭をよぎる。
目に映るものすべては不確かで、曖昧で、なにかを信じることなどできないそうもない。美しさも、おぞましさも、幸せも、恐怖も。そのどれもが疎ましく、しかしそれと同時に、焦がれてしまう。それならばいっそ、感情などなければよいのだろうか。ただその場にじっとしていればいいのだろうか。

『エヴォリューション』。映画が私に問いかける。言い知れぬ不安と心地よさの波が、私の腹の中でうごめく。

(text:大久保渉)




「心地よい恐怖」


映画の基本はホラーとミステリーだと思っている。恐怖と謎解き。恋愛映画はどうなんだと言われそうだけど、恋愛だって恐怖と謎解きに翻弄される行いだ。
その両者がまざまざと、そして圧倒的な映像美で示されたのが『エヴォリューション』だ。少年と女性しかいない島。母と暮らす10歳のニコラは、自身の身体に奇妙な医療行為を施される。なにかがおかしい、その理由を見つけようと夜中に出かける母を尾行した先にあったものは、悪夢のような光景だった。
おどろおどろしさと得体のしれなさの先にあるものを探しながら、何故そうなったのかと考えずにはいられない。これは一体どういうことなのか。しかしいかに論理的に考えてみても、その解はわからず、わからなさとおぞましさに身を委ねるしかない。謎は解かれぬまま、おどろおどろしさはいつしか心地よい恐怖となり、海の中に沈んでいく。

(text:長谷部友子)


© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015
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『エヴォリューション』

原題:Evolution
2015年/フランス/81分

作品解説
『エコール』の監督が贈る、最も美しい“悪夢”。
少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。“エヴォリューション(進化)”とは何なのか…?ギャスパー・ノエの公私にわたるパートナーであり、森で暮らす少女たちを描いた『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督が贈る、最も美しい“悪夢”。映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等大きな反響を巻き起こした。

キャスト
マックス・ブラバン
ロクサーヌ・デュラン
ジュリー=マリー・パルマンティエ

スタッフ
監督:ルシール・アザリロヴィック
配給:アップリンク

公式ホームページ
http://www.uplink.co.jp/evolution/

劇場情報
2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開

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【執筆者プロフィール】

大久保渉 Wataru Okubo

1984年、座間市生。映画活動中。ライターとして『ことばの映画館』、『映画芸術』、『FILMAGA』、『トランシネマWEB』、その他映画系媒体にて執筆中。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭事務局にアシスタント勤務(2016年4~7月)。インディペンデント映画の宣伝に従事。その他、KAWASAKIしんゆり映画祭、インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン、各種映画祭にて活動中。
Twitterアカウント:@OkuboWataru 


長谷部友子 Tomoko Hasebe

何故か私の人生に関わる人は映画が好きなようです。多くの人の思惑が蠢く映画は私には刺激的すぎるので、一人静かに本を読んでいたいと思うのに、彼らが私の見たことのない景色の話ばかりするので、今日も映画を見てしまいます。映画に言葉で近づけたらいいなと思っています。

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2016年11月20日日曜日

文学フリマ出店お知らせ

11月23日に開催される、第二十三回文学フリマ東京に出店します。
今回は、新刊の「ことばの映画館 第4館」と
既刊「ことばの映画館 第3館」を販売いたします。

開催日:2016年11月23日(水祝)
開催時間:11:00~17:00
会場:東京流通センター 第二展示場
アクセス:東京モノレール「流通センター駅」徒歩1分
出店者数約760出店予定
公式サイト:http://bunfree.net/

〔ことばの映画館〕ブース
カテゴリ : 評論|映画
ブース位置 : カ-49 (Fホール ※2F)

※ブース配置図は
http://bunfree.net/?tokyo_bun23
をご覧ください。

文学フリマってなに?

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「文学フリマ」とは文学作品の展示即売会です。
評論家・まんが原作者として知られる大塚英志さんが『群像』誌2002年6月号(講談社)掲載のエッセイ「不良債権としての『文学』」で行った呼びかけを発端として生まれたイベントです。既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表できる「場」を提供すること、作り手や読者が直接コミュニケートできる「場」をつくることを目的とし、プロ・アマといった垣根も取り払って、すべての人が〈文学〉の担い手となることができるイベントとして構想されました。 
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(文学フリマ公式HPより)

文学フリマでは文書だけでなく、オリジナルの雑貨や写真集など
色々なものが販売されているイベントです。
発想、人、経験……そして、会場の熱気。
必ず新しい世界との出会いがあるイベントだと思います。
会場ではフードの販売や、休憩スペースなどもあります。
もしご興味ありましたら、是非行かれてみてください。
そして〔ことばの映画館〕のブースにお立ち寄り頂けたら、嬉しいです。

販売する冊子のご紹介
 
「ことばの映画館 第4館」600円
 特集テーマ:アジア






















目次:
〈特集1〉アピチャッポン
[インタビュー]映画批評家-金子遊先生に聞く-アピチャッポンてなんだ? 
アピチャッポンの「複数」の世界  text高橋雄太
アピチャッポン的追想  text佐藤奈緒子
召還としてのアピチャッポン text長谷部友子

〈特集2〉映画の人
[インタビュー]『ひと夏のファンタジア』主演、岩瀬亮  text常川拓也
[インタビュー]『ペロル』ペマ・ツェテン監督  text常川拓也

〈特集3〉ネオネオ評論大賞入選作
生きている市民ケーン  text高橋雄太

〈寄稿〉
偶然が、つむぐもの/映画『つむぐもの』+アジア映画、徒然文。  text岡村亜紀子
九份の不思議なケーキ  text井河澤智子
インド映画でわたしも考えた/好きな料理店と作品の雑感  text大久保渉
アジアの純「緩」  text今泉健
『祖谷物語-おくのひと』-ヒトコマのつながり  text辻秋之
日本映画の鉱脈  text加賀谷健
予感  text藤野みさき
葛藤を超えてゆこうとすることの、希望  text西田志緒
大地のうた/サタジット・レイ  text奥平詩野
『レイジー・ヘイジー・クレイジー』女性身体の解放と男性性の疎外  text宮本匡崇
「W的悲劇」  text高野ゆかり

〈連載〉
ミナミの小部屋 映画はたばこと共謀する  textミ・ナミ

〈取材〉映画の空間
ファルツァ総曲輪 / 中野 タコシェ/新宿 模索舎 / 渋谷 アップリンク
横浜シネマリン / 池袋 古書往来座/シネマート新宿 / 下高井戸シネマ
神保町 矢口書店 / 三鷹 水中書店

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「ことばの映画館 第3館」500円
 特集テーマ:初恋


目次:
[特別寄稿]きみ、前をあるいてくれないか  text萩野亮 

この秘密を、誰かと共有できたなら  text髙木愛
初恋の君、彼女の半生  text井河澤智子
予告された初恋の記録  text高橋雄太 
初恋remix  text岡村亜紀子
「初恋映画」あれこれ  text大久保渉
初恋とハッピーエンド  text三橋友望子
「初恋」という未知のもの  text梅澤亮介
初恋は、幸せの扉をひらく-『スプラッシュ』  text西田志緒
恋の原風景-『建築学概論』  text荒井南
『Love Letter』-映画という「美」  text辻秋之
『ハルフウェイ』-女子の欲求  text名久井梨香
「シェルブールの雨傘」-恋で死ぬのは映画だけ  text藤野みさき

抑圧がもたらす不幸とその反動としてのイノセンスへの回帰について
或いは私は如何にして劇場へ足を運ぶこととなったか  text宮本匡崇

[平成悪趣味映画放談]第一回 グザヴィエ・ドランについて  text常川拓也

いつか読書する日  text長谷部友子
映画が映画として  text加賀谷健
血の海から  text栗田奈津子
境目の少女  text今泉健
[ミナミの小部屋]第一回 ビデオテープの追憶  textミ・ナミ

苺とチョコレートと私  text佐藤奈緒子
少女に恋をさせよというけれど  text高橋秀弘
一一  text水野友美子
「追憶」  text小川学
ひとりきりの映画館  text佐藤聖子
告白的女優散文  text神原健太朗
『あこがれ』  text奥平詩野
人生を特別なものにする「初めて恋した映画」  text横田美穂子


2016年11月6日日曜日

第17回東京フィルメックス《ラインナップ発表》text 井河澤 智子

今年もやってきました、いよいよ東京フィルメックスのシーズンです!

17回目を迎えました東京フィルメックス。
毎年、目から鱗が落ちるような映画体験を味わうことができる映画祭です。
今年はどんなラインナップなのでしょう?

誠実で、切実で、美しき作品は、いつまでも生き続けます。
どうしても見ていただきたい素晴らしい映画、クラシックも合わせて22本を上映いたします。

驚きの連続にご期待ください。
作家たちの心を覗いていくと、世界がつながります。

  東京フィルメックス ディレクター       林 加奈子
  東京フィルメックス プログラム・ディレクター 市山 尚三

・コンペティション部門
コンペ作品は10作品。どれも「どうしても」という切実な気持ちが伝わってくる作品ばかりです。
そのうち6本が、監督の長編デビュー作。未来の巨匠が、ここにいるかもしれません。

『オリーブの山』★長編監督デビュー作
Mountain / イスラエル、デンマーク / 2015 / 83分 / 監督:ヤエレ・カヤム
厳格なユダヤ教徒の家庭で慎ましい生活を送ってきた主婦が、ある日別の世界を知ってしまう。
彼女が迫られる選択とは?

『バーニング・バード』
Burning Birds / フランス、スリランカ / 2016 / 84分 / 監督:サンジーワ・プシュバクマーラ
これも主婦の話。とてもまっすぐでシンプルな話。
内戦中のスリランカ。8人もの子を持つ平凡な主婦が、夫を民兵に殺害される。
自らも内戦を経験した監督が、暴力や女性蔑視への怒りをストレートに表現した力作。

『普通の家族』
Ordinary People / フィリピン / 2016 / 107分 / 監督:エドゥアルド・ロイ・Jr
マニラの街頭で、スリで生計を立てる、16歳と17歳のストリートチルドレンの物語。
是枝裕和監督『誰も知らない』を想起させる作品だということです。
ヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門で観客賞受賞。

『マンダレーへの道』
The Road to Mandalay / 台湾、ミャンマー、フランス、ドイツ / 2016 / 108分 / 監督:ミディ・ジー
ミャンマーからタイへ違法越境する途中で知り合ったふたり。しかし彼らの仕事先にも警察の捜査の手が及び……
ミャンマー出身で、現在は台湾をベースに活動するミディ・ジー監督作。
今年のヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門にて上映された。

『神水の中のナイフ』★長編監督デビュー作
Knife in the Clear Water / 中国 / 2016 / 93分 / 監督:ワン・シュエボー
昨年の東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞した『タルロ』のプロデューサー、ワン・シュエボーの監督デビュー作。
イスラム教を信仰する回族の人々の日常。
画面の作り方が非常に美しく、素朴で、静かで、心にしっかりしみてきます
言うまでもありませんが、「水の中のナイフ」ではありませんのでご注意を(笑)。

『よみがえりの樹』★長編監督デビュー作
Life After Life / 枝繁葉茂 / 中国 / 2016 / 80分 / 監督:チャン・ハンイ
中国の村の伝説を描いた、一種の幽霊譚。監督は、「3年間かけて作りました」とおっしゃっていたそうです。
どう見てもお金がかかっているようには見えないのに(林ディレクター談)、ゴージャスで濃密な映画的体験を味わえる作品。
ジャ・ジャンクーが若手監督作品をプロデュースする「添翼計画」最新作。

『恋物語』★長編監督デビュー作
Our Love Story / 韓国 / 2015 / 99分 / 監督:イ・ヒョンジュ
女性同士の間に展開されるラブ・ストーリー。
監督はこの題材で撮らないと先に進めなかったのだろうなぁ、という切迫感が感じられます。
サン・セバスチャン映画祭にて上映。

『私たち』★長編監督デビュー作
The World of Us / 韓国 / 2015 / 95分 / 監督:ユン・ガウン
学校で仲間外れにされがちなスン。夏休みに引っ越してきた少女ジア。
小学校高学年の少女たちの物語。子供たちの物語ではあるが、大人が観て唸る映画。

『ぼくらの亡命』
Our Escape / 日本 / 2016 / 115分 / 監督:内田伸輝
フィルメックスにゆかりの深い内田伸輝監督の最新作。
森の中で暮らす男は、美人局をさせられている女性と出会い、彼女をその境遇から助け出すため誘拐する。
「他者」への依存、「自立」とはどういうものなのか、ということを監督なりに考え抜いた作品。

『仁光の受難』★長編監督デビュー作
Suffering of Ninko / 日本 / 2016 / 70分 / 監督:庭月野議啓
異様に女性にモテるお坊さんの悩み。
自主映画で時代劇を撮るのはお金がかかるので大変だったろう、が、しかし、絵作りの技、撮影のこだわりが光る一品。

・特別招待作品
10本の作品が選ばれました。新作5本、クラシック5本です。

『THE NET 網に囚われた男』
The Net / 韓国 / 2016 / 114分 / 監督:キム・ギドク
オープニング作品。
フィルメックスでおなじみキム・ギドク監督最新作。ヴェネチア映画祭でワールドプレミア上映された。
ある事故により、国境線を超えてしまい、韓国警察に捕まってしまった北朝鮮の漁師。体制に翻弄される男の姿。
これまでのキム・ギドク作品と少し風味が異なり、がっちりとしたストーリー性を感じさせる作品。

『大樹は風を招く』
Trivisa / 香港 / 2016 / 97分 / 監督:フランク・ホイ、ジェヴォンズ・アウ、ヴィッキー・ウォン
クロージング作品。
中国返還前夜の香港。暗黒街に広まった噂で運命が一変していくギャングの人生。
実在した3人の人物にヒントを得た作品。
ジョニー・トー主宰「鮮浪潮短編映画祭」の受賞者3名を起用し、3名それぞれにパートを任せながら、編集段階で1本の作品に仕上げた、という作り方がされている。

『山<モンテ>』
Monte / イタリア、フランス、アメリカ / 2016 / 105分 / 監督:アミール・ナデリ
アミール・ナデリ監督がイタリアで撮影した作品。
あまり前情報を入れずに観て欲しい、という1本です。
ナデリらしい、何かに取り憑かれたような行動を続ける人物を描いた作品。

『エグジール』
Exile / フランス、カンボジア / 2016 / 78分 / 監督:リティ・パン
前作『消えた画』に引き続き、クメール・ルージュ時代のカンボジアを扱った、リティ・パン監督の新作。 『消えた画 クメール・ルージュの真実』 を別のアプローチで撮った作品とも言える。
カンヌ映画祭でワールド・プレミアを飾った。

『苦い銭』
Bitter Money / 香港、フランス / 2016 / 152分 / 監督:ワン・ビン
ワン・ビン監督の新作。ここ数作、雲南省を舞台に撮影してきた監督だが、今回は、故郷・雲南省を出て、紡績工場で働く少女を中心とした群像劇。ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門脚本賞受賞。

・特別招待作品 フィルメックス・クラシック

『ザーヤンデルードの夜』
The Nights of Zayandehrood / イラン / 2016 / 63分 / 監督:モフセン・マフマルバフ
『独裁者と小さな孫』のモフセン・マフマルバフ監督作品。1990年に製作されたが、検閲により、永らくイラン国内外を問わず見ることが叶わなかった幻の作品。ネガがロンドンで復元され、ヴェネチア国際映画祭で公開された。

『タイペイ・ストーリー』
Taipei Story / 台湾 / 1985 / 110分 / 監督:エドワード・ヤン
台湾ニューシネマの記念碑的な作品。エドワード・ヤン長編第1作、製作・脚本・主演はホウ・シャオシェン。今年ボローニャ市立シネマテークにてデジタル復元された。

『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿 デジタル修復版』
Dragon Inn / 台湾 / 1967 / 111分 / 監督:キン・フー
キン・フー長編第3作目。製作当時アジア各地で大ヒットを記録し、カンフー映画ブームを起こす原点となった傑作武侠映画。
(筆者としては、ツァイ・ミンリャン監督『楽日』の劇中劇のアノ映画かな、とあれこれ調べてみたのですが、確証得られず。これは自分の目で確認するしかないですね!)

『俠女 デジタル修復版』
A Touch of Zen / 台湾 / 1971 / 180分 / 監督:キン・フー
カンヌ映画祭で高等技術委員会グランプリを受賞したアジア・アクション映画の金字塔。
(会見では、ホウ・シャオシェン監督『黒衣の刺客』との関係について触れられていましたが、英語タイトルを見ると……ジャ・ジャンクー監督『罪の手ざわり』(英題: A Touch of Sin)
にも影響を与えていそうですね!フィルメックスで取り上げられるべくして取り上げられた作品ではないでしょうか。)

『ざ・鬼太鼓座』デジタルリマスター
The Ondekoza / 日本 / 1981 / 105分 / 監督:加藤泰
和太鼓の芸能集団「鬼太鼓座」の活動を追った傑作ドキュメンタリー。
生誕100年を迎えた巨匠・加藤泰の遺作。
諸般の事情により一般公開されることはなかったが、本年度ヴェネチア映画祭クラシック部門でワールド・プレミアを飾った。

・特集上映 イスラエル映画の現在

『山のかなたに』
Beyond the Mountains and Hills / イスラエル、ベルギー、ドイツ / 2016 / 90分 / 監督:エラン・コリリン
『迷子の警察音楽隊』のエラン・コリリン監督作。善意のもとに暮らす家族の日常の中に、イスラエルが抱える矛盾を描く。

『ティクン〜世界の修復』
Tikkun / イスラエル / 2015 / 120分 / 監督:アヴィシャイ・シヴァン
ロカルノ映画祭審査員特別賞受賞。昏睡状態に陥ったユダヤ教神学校生が意識を取り戻した時、彼の人格は変わってしまっていた。
「ツァイ・ミンリャンにも匹敵するような」強烈なイメージで描かれる、アヴィシャイ・シヴァン監督の2作目。

上映作品22本すべてご紹介いたしました。
正直、濃密すぎるラインナップだと思いました。圧倒されます。
林加奈子ディレクターは、
「それぞれの監督の考えで作った映画だが、全体を通してみると繋がりが見えてくるかもしれない。」と語ります。
それぞれの監督がそれぞれの意図で作った映画が、有機的なつながりを持って立ち上がってくる。
映画祭とは、現在の「世界」を垣間見せてくれる場所なのかもしれません。

今年も素晴らしい映画との出会いがありそうです。

(text:井河澤智子)

第17回東京フィルメックス

公式サイト
http://filmex.net/2016/

開催情報
2016年11月19日(土)〜2016年11月27日(日)

開催会場
有楽町朝日ホール
TOHOシネマズ 日劇 

上映作品一覧
・東京フィルメックス コンペティション 
http://filmex.net/2016/program/competition
・特別招待作品
http://filmex.net/2016/program/specialscreenings
・特集上映 イスラエル映画の現在
http://filmex.net/2016/program/sp1

上映スケジュール
http://filmex.net/2016/schedule

チケット情報
http://filmex.net/2016/ticket
11月3日より発売開始!
今年からチケット発売方法が変わりました!
詳細は上記公式サイトをご覧ください。

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【執筆者プロフィール】

井河澤 智子 Ikazawa Tomoko

本当に毎年映画祭のシーズンが楽しみで仕方がありません。
毎年やくたいもない文章を書いておりますが、
「またこいつか」程度に読み流していただければ……と思います。

さて。
毎年、東京フィルメックスでは「くぅぅもういちど観たぁぁい!」という作品があらわれますが
昨年の「ふわぁぁぁ」な1本に、チャン・ツォーチ監督『酔・生夢死』をあげたいと思います。
最終日、日曜の夜、最後の上映なんで観ておくか、程度の気持ちで観て、
まんまとノックアウトされました。ふわぁぁぁ!

ああ、またどこかで上映されないかなー。
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2016年11月5日土曜日

映画『ぽんぽこマウンテン』text高橋 雄太

「流れ行く時間」





私たちは絶え間なく流れる時間の中で生きている。映画『ぽんぽこマウンテン』を見ていると、そんな当たり前のことに気づかされる。

モノクロームの画面の中、白い山型のトランポリン・ぽんぽこマウンテンの上で子供たちが飛び跳ねている。足が表面に着いた瞬間、再び足は離れ、子供たちは宙に舞う。下降と上昇が入れ替わるこの一瞬は、あっという間に過ぎ去ってしまう。ぽんぽこマウンテンの頂上。そこは左下がりの斜面と右下がりの斜面が入れ替わる一点である。ボールを置けば、山を転がり落ちてしまうだろう。山肌や山頂に達するのは、ほんの一瞬の出来事にすぎないのだ。

作品中にいくつも登場する脱ぎ捨てられた靴や笑顔の子供たちの静止画は、捉えられた瞬間とも思える。だが、その前後には何も起きない。下降も上昇もない、凍った時間だ。連続する静止画が動画に見えるように、瞬間が続くことで時は流れ出す。

モノクロームの画面は過去になっていく。作品中での子供たちが、小学生以下専用と書かれたぽんぽこマウンテンで遊べなくなる日もやって来る。それが時間の中に生きることである。

(text:高橋雄太)




   映画『ぽんぽこマウンテン』
2016 年/10 分/HD/16:9/白黒

撮影・編集:吉田孝行


作品概要 
「ぽんぽこマウンテン」とは、日本のとある公園に設置されている白い色のエア遊具のことである。雪山のようなトランポリンであり、その上で子ども達は、ぽんぽこ飛び跳ねて遊 んでいる。本作は、曲線のあるユニークな風景の中で、無邪気に遊んでいる子ども達の 姿を、動画と静止画の組み合わせによって表現したモノクロの映像作品である。作品の冒頭に引用される「子供心を失った者は、もはや芸術家とはいえない」という彫刻家コンスタンチン・ブランクーシの言葉に着想を得て制作された。

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国内上映情報


・日本セルビア映画祭2016に選出決定。11月12日(土)13時30分開始のAブロックにて上映決定。

会場:東京おかっぱちゃんハウス(西武新宿線・上石神井駅)http://www.jsff.jp/cont9/22.html




海外上映情報


・国際ヴィデオアート祭「Now&After 2016」
(10月22日〜11月29日、モスクワ、ロシア)
世界63ヵ国約800本の応募作品の中から、コンペ部門28本の1本に選出。毎日展示上映中。なお、毎日一人ずつ作家を紹介する「VIDEO NOW」という特別コーナーで、11月5日(土)に吉田孝行作品が取り上げられる予定。http://bit.ly/2fsyVWq

・三匹の小さなオオカミ映画祭(国際こども映画祭)
(11月3日〜6日、リュブリャナ、スロベニア)
11月4日(金)18時00分からのプログラム「DOCUCHILD」で上映。
http://bit.ly/2eHWczU

・サラミンダナオ・アジア映画祭(国際アジア映画祭)
(11月7日~11月13日、ジェネラルサントス、フィリピン)
短編部門に選出。上映日程未定。
http://salamindanaw.org/

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【監督プロフィール】


吉田孝行:Takayuki Yoshida

1972 年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。会社勤めをしていた35歳の時に映画に目覚め、在職のままNPO 法人映画美学校に通い、様々な映像作品の制作に携わる。東京フィルメックス2014でアジアの映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」のコーディネーターを担当。日本で唯一のドキュメンタリー専門誌「neoneo」編集委員。



共著に『クリス・マルケル―遊動と闘争のシネアスト』、『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(近刊)など。

最新の映像作品『ぽんぽこマウンテン』が、世界10ヵ国以上の国際フェスティバルに選出 されている。

(以下、主な国際フェスティバルの選出実績)

・New Media Arts Festival Madrid (IVAHM) 2016(国際ヴィデオアート祭) (2016 年 5 月 5 日〜5 月 15 日、マドリード、スペイン)

・Facade Video Festival 2016(国際ヴィデオアート祭) (2016 年 9 月 8 日〜9 月 10 日、プロヴディフ、ブルガリア)

・Eye on Film - International Film Festival for Children and Youth(国際こども映画祭) (2016 年 9 月 30 日~10 月 4 日、リュブリャナ他全 10 都市、スロベニア)

・International Video Art Festival Now&After 2016(国際ヴィデオアート祭) (2016 年 10 月 22 日〜11 月 29 日、モスクワ、ロシア)

・Video Art Project "Larga Vida a la Nueva Carne (LVNC)"(国際ヴィデオアート展) (2016 年 10 月 26 日〜10 月 29 日、ブエノスアイレス、アルゼンチン)

・SalaMindanaw Asian Film Festival(国際アジア映画祭)
(2016 年 11 月 7 日~11 月 13 日、ジェネラルサントス、フィリピン)

【Facebook】https://www.facebook.com/yoshidafilms(日本語) 
【Twitter】https://twitter.com/yoshidafilms(日本語)

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吉田孝行監督・執筆情報

論考「不在の人物とその表象ージェームス・ベニング『ステンプル・パス』」が『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(西村智弘・金子遊=編森話社)に収録。
執筆者=越後谷卓司、金子遊、太田曜、西村智弘、ジュリアン・ロス、阪本裕文、平倉圭、吉田孝行、西川智也、岡田秀則。

11月中旬発売予定。

11/22(火)にアップリンクで刊行記念イベント第一弾開催。
http://www.uplink.co.jp/event/2016/46531

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【執筆者プロフィール】

高橋雄太:Yuta Takahashi

1980年生。北海道出身。映画、サッカー、読書、旅行が好きな会社員にして『ことばの映画館』のライター。シネマ・キャンプ批評・ライター講座第二期受講生。

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