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「手をつなごう」
自分にないものを相手が持っているからこそ惹かれるのか。それとも自分と似ているところがあるからこそ一緒にいて落ち着けるのか。
お互いの考えを尊重しあえるからこそ対等な関係が築けるのか。それとも悪いところを指摘しあえるからこそ必要な存在となりえるのか。
ありのままの自分を愛してくれる人と一緒になるのが幸せなのか。相手のためならいくらでも自分を変えられる程の強い想いがある方がより愛していると言えるのか。
ただ、愛する人と一緒に笑い合えるその瞬間のやすらぎは、理屈抜きに溢れ出る感情なのだから、目と目が合って幸せを感じるのならば、迷うことなく手と手をとりあえばいいのではないだろうか。
映画『キ&カ~彼女と彼~』は、「夢はCEO」と息巻くキャリア志向の女性・キアと、「主夫になりたい」と家庭を尊ぶ資産家の息子・カビールの、考え方は違えども、相性も目的も合致した二人の恋と結婚、心の成長を描きだす。
「男は仕事。女は家庭」。脚本にはそうした社会の考え方に対する「モノ言い」もあるけれど、しかし本作の要となるのは惹かれあう恋人に必要なものは何かということ。
飛行機の中で偶然出会い、初めて話したその日の夜に、バーでお互いの夢に茶々を入れ合うキアとカビールの顔が、交互にパパッと切り替わりながら映しだされるシーンが印象に残る。
初めは同じ場所にいてもフレームで切り離されていた二人の姿が、日を追うごとにだんだんと、寄り添うようにひとつの画面に映り込む。
近づく二人の心と身体。そして、堰を切ったように流れだす恋のメロディー。
近づく二人の心と身体。そして、堰を切ったように流れだす恋のメロディー。
「心地いいと思うなら、目をそらさなくていい」
力の限り、腹の底から、伝えたい言葉を口にしながら相手の瞳を見つめつつ、声を重ねるキアとカビール。
「君とわたしのおかしな恋愛」
手をつなぎあう二人の熱い体温が私の心まであたたかくしてくれる。恋人同士が一緒にいたいと思う理由は、そのぬくもりを求め合うことだけで十分なのではないか。
あまりにも浅はかだと言われるかもしれないが、家督を重んじる国に生まれたはずのキアとカビールの衝動的な付き合い方は、見る者にこの上もない純粋な愛のかたちを示してくれる。
あまりにも浅はかだと言われるかもしれないが、家督を重んじる国に生まれたはずのキアとカビールの衝動的な付き合い方は、見る者にこの上もない純粋な愛のかたちを示してくれる。
(text:大久保渉)
『キ&カ ~彼女と彼~』
原題:Ki & Ka
2016/ インド/ 126分
作品解説
キャリア志向の女性と主夫志望の男性。その結婚が思わぬ展開に! 夫婦の役割を入れ替えたカップルの話だが、大胆でユニークな作品に定評のあるバールキー監督による驚きのひねりが物語を盛り上げる。演技派女優カリーナーと若手注目俳優アルジュンの、ふたりの「カプール」の好演も見逃せない。
飛行機で偶然出会ったキャリア志向の女性キアと「主夫」志望の男性カビール。二人は逆転夫婦として結婚。順調だった結婚生活は、カビールが「カリスマ主夫」として人気になったことから歯車が狂い始める。
キャスト
キア:カリーナー・カプール
カビール:アルジュン・カプール
スタッフ
監督:R.バールキー
©Indian Film Festival Japan 2016 |
日本未公開の最新インド映画を上映。インドと日本、両国の人々の交流と友好を深めることを目的とした映画祭。東京会場は、2016年10月7日(金)~10月21日(金)まで、ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催。大阪会場は、2016年10月8日(土)~10月21日(金)まで、シネ・リーブル梅田にて開催。
開催期日/場所
東京:10月7日(金)~10月21日(金)/ ヒューマントラストシネマ渋谷
大阪:10月8日(土)~10月21日(金)/シネ・リーブル梅田
公式ホームページ
http://www.indianfilmfestivaljapan.com/index.html
タイムテーブル
http://www.indianfilmfestivaljapan.com/schedule.html
©Indian Film Festival Japan 2016
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【執筆者プロフィール】
大久保渉 Wataru Okubo
ライター・編集者・映画宣伝。フリーで色々。執筆・編集「映画芸術」「ことばの映画館」「neoneo」「FILMAGA」ほか。東京ろう映画祭スタッフほか。邦画とインド映画を応援中。でも米も仏も何でも好き。BLANKEY JET CITYの『水色』が好き。桃と味噌汁が好き。
Twitterアカウント:@OkuboWataru
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