2016年11月5日土曜日

映画『ぽんぽこマウンテン』text高橋 雄太

「流れ行く時間」





私たちは絶え間なく流れる時間の中で生きている。映画『ぽんぽこマウンテン』を見ていると、そんな当たり前のことに気づかされる。

モノクロームの画面の中、白い山型のトランポリン・ぽんぽこマウンテンの上で子供たちが飛び跳ねている。足が表面に着いた瞬間、再び足は離れ、子供たちは宙に舞う。下降と上昇が入れ替わるこの一瞬は、あっという間に過ぎ去ってしまう。ぽんぽこマウンテンの頂上。そこは左下がりの斜面と右下がりの斜面が入れ替わる一点である。ボールを置けば、山を転がり落ちてしまうだろう。山肌や山頂に達するのは、ほんの一瞬の出来事にすぎないのだ。

作品中にいくつも登場する脱ぎ捨てられた靴や笑顔の子供たちの静止画は、捉えられた瞬間とも思える。だが、その前後には何も起きない。下降も上昇もない、凍った時間だ。連続する静止画が動画に見えるように、瞬間が続くことで時は流れ出す。

モノクロームの画面は過去になっていく。作品中での子供たちが、小学生以下専用と書かれたぽんぽこマウンテンで遊べなくなる日もやって来る。それが時間の中に生きることである。

(text:高橋雄太)




   映画『ぽんぽこマウンテン』
2016 年/10 分/HD/16:9/白黒

撮影・編集:吉田孝行


作品概要 
「ぽんぽこマウンテン」とは、日本のとある公園に設置されている白い色のエア遊具のことである。雪山のようなトランポリンであり、その上で子ども達は、ぽんぽこ飛び跳ねて遊 んでいる。本作は、曲線のあるユニークな風景の中で、無邪気に遊んでいる子ども達の 姿を、動画と静止画の組み合わせによって表現したモノクロの映像作品である。作品の冒頭に引用される「子供心を失った者は、もはや芸術家とはいえない」という彫刻家コンスタンチン・ブランクーシの言葉に着想を得て制作された。

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国内上映情報


・日本セルビア映画祭2016に選出決定。11月12日(土)13時30分開始のAブロックにて上映決定。

会場:東京おかっぱちゃんハウス(西武新宿線・上石神井駅)http://www.jsff.jp/cont9/22.html




海外上映情報


・国際ヴィデオアート祭「Now&After 2016」
(10月22日〜11月29日、モスクワ、ロシア)
世界63ヵ国約800本の応募作品の中から、コンペ部門28本の1本に選出。毎日展示上映中。なお、毎日一人ずつ作家を紹介する「VIDEO NOW」という特別コーナーで、11月5日(土)に吉田孝行作品が取り上げられる予定。http://bit.ly/2fsyVWq

・三匹の小さなオオカミ映画祭(国際こども映画祭)
(11月3日〜6日、リュブリャナ、スロベニア)
11月4日(金)18時00分からのプログラム「DOCUCHILD」で上映。
http://bit.ly/2eHWczU

・サラミンダナオ・アジア映画祭(国際アジア映画祭)
(11月7日~11月13日、ジェネラルサントス、フィリピン)
短編部門に選出。上映日程未定。
http://salamindanaw.org/

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【監督プロフィール】


吉田孝行:Takayuki Yoshida

1972 年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。会社勤めをしていた35歳の時に映画に目覚め、在職のままNPO 法人映画美学校に通い、様々な映像作品の制作に携わる。東京フィルメックス2014でアジアの映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」のコーディネーターを担当。日本で唯一のドキュメンタリー専門誌「neoneo」編集委員。



共著に『クリス・マルケル―遊動と闘争のシネアスト』、『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(近刊)など。

最新の映像作品『ぽんぽこマウンテン』が、世界10ヵ国以上の国際フェスティバルに選出 されている。

(以下、主な国際フェスティバルの選出実績)

・New Media Arts Festival Madrid (IVAHM) 2016(国際ヴィデオアート祭) (2016 年 5 月 5 日〜5 月 15 日、マドリード、スペイン)

・Facade Video Festival 2016(国際ヴィデオアート祭) (2016 年 9 月 8 日〜9 月 10 日、プロヴディフ、ブルガリア)

・Eye on Film - International Film Festival for Children and Youth(国際こども映画祭) (2016 年 9 月 30 日~10 月 4 日、リュブリャナ他全 10 都市、スロベニア)

・International Video Art Festival Now&After 2016(国際ヴィデオアート祭) (2016 年 10 月 22 日〜11 月 29 日、モスクワ、ロシア)

・Video Art Project "Larga Vida a la Nueva Carne (LVNC)"(国際ヴィデオアート展) (2016 年 10 月 26 日〜10 月 29 日、ブエノスアイレス、アルゼンチン)

・SalaMindanaw Asian Film Festival(国際アジア映画祭)
(2016 年 11 月 7 日~11 月 13 日、ジェネラルサントス、フィリピン)

【Facebook】https://www.facebook.com/yoshidafilms(日本語) 
【Twitter】https://twitter.com/yoshidafilms(日本語)

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吉田孝行監督・執筆情報

論考「不在の人物とその表象ージェームス・ベニング『ステンプル・パス』」が『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(西村智弘・金子遊=編森話社)に収録。
執筆者=越後谷卓司、金子遊、太田曜、西村智弘、ジュリアン・ロス、阪本裕文、平倉圭、吉田孝行、西川智也、岡田秀則。

11月中旬発売予定。

11/22(火)にアップリンクで刊行記念イベント第一弾開催。
http://www.uplink.co.jp/event/2016/46531

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【執筆者プロフィール】

高橋雄太:Yuta Takahashi

1980年生。北海道出身。映画、サッカー、読書、旅行が好きな会社員にして『ことばの映画館』のライター。シネマ・キャンプ批評・ライター講座第二期受講生。

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