2016年11月25日金曜日

映画『エヴォリューション』ルシール・アザリロヴィック監督インタビューtext長谷部 友子、大久保 渉


Photo by Masataka Miyamoto 

「ことばの映画館」は、フランス映画祭2016のために6月に来日されたルシール・アザリロヴィック監督に11月26日(土)より公開される監督作『エヴォリューション』についてインタビューしました。見終わっても謎ばかりの『エヴォリューション』、監督は何を考えて映画を制作したのか。ぜひインタビュー記事をご覧ください。

*インタビュー内容はネタバレを含みます。






――とても美しい映像の作品でした。世界観も緻密に構築されていて、現実世界とはどのようにリンクしているのでしょうか。それとも全く切り離されたものなのでしょうか。

想像の世界と現実の世界は表裏一体だと思います。私はこの映画をスタジオで撮影したくありませんでした。本当にそこにある島、そこにある村、そういう現実性や具体性がどうしても必要だと思ったのです。想像の世界であっても、実際にある病院で撮影したかったのです。想像の世界と現実の世界というのは、私の中では繋がっているのです。







――水中のシーンにはこだわりがあったと思うのですが、どのように撮影したのでしょうか。カメラマンに対して何かリクエストはしましたか? 

撮影監督とはよく話し合い、私のやりたいことをよく理解してくれて、構図や照明も全面的に信頼していました。撮影場所はカナリア諸島のある島だったのですが、カメラを置くだけで画になるような場所で、ロケ地に助けられたと思います。

予算の都合上、カメラをあまり移動できなかったのですが、それがかえっていい効果を与えているのかもしれません。構図に関しては若松孝二監督や大島渚監督といった日本映画を参考にしたかったので、撮影監督に撮影前に勉強してくださいとお願いしました。

Photo by Masataka Miyamoto 




水中のシーンの撮影は、ダイバーの資格を持ったドキュメンタリーのカメラマンにお願いしました。カナリア諸島の自然に詳しい人で、こういう海藻や岩があるという知識がとても役立ちました。水中での撮影なので、ビデオで確認しながら撮ることができなかったので、私が事前に「こういう画が撮りたい」とスケッチを描いて説明し、海に潜ってもらい、映像をビデオで確認して、また潜ってという繰り返しで、とても大変な作業でした。








ドキュメンタリーのカメラマンの方なので、どうしても生き物のドキュメンタリーっぽくなってしまって。私はそういうものを全然求めていなかったので、「お魚はいいから!」みたいな時もありました(笑)。

お魚はいらないので、もっとこう幻想的な、海の汚れた部分を私は撮りたいのだという意思の疎通が少し難しかったです。最終的にはよく理解してくれて、よい映像が撮れました。







――子どもが主人公の映画ですが、どのように撮影をしたのでしょうか。現場では張りつめていたのか、反対に和気藹々と笑いながら進めたのか撮影時の雰囲気を教えてください。 

子どもっていうのは、とても面白いですね。もちろん笑いはありました。撮影現場は暗く深刻ということは全然なかったです。主人公を演じたマックスくんは、よく笑うとても明るい子で、だからこそ大変だった面もあります。なるべく真剣に、集中して表情を殺して撮影していかなければなりませんでしたから。




Photo by Masataka Miyamoto 

ストーリーは彼らにはどうでもいいみたいで、子どもたちはとにかく撮影に参加することが楽しくてしょうがないようでした。例えば子どもたちは水槽に大変興味を示し、水槽のシーンに出られるということがちょっと特権的のようでした。最後に具合が悪くなって男の子が吐くシーンがありましたが、「早く吐くシーンをやりたい!」と言っていました。子どもたちにとっては、そういう気持ち悪いシーンが逆に楽しいみたいでした。







――少年は成長して大人になるでもなく、女性も妊娠して子どもを出産するでもなく、全く違う生態系のようなものが描かれているように思えました。この映画の中で、変容というものがどういう意味を持っているのか教えてください。

そうですね。映画の最初のイメージについてお話すればわかっていただけると思います。映画の最初のイメージはお腹が痛い少年が病院に運ばれるというものでした。少女ではなく少年をイメージしたのは、少女であれば妊娠して出産するというのは当たり前すぎて面白みに欠ける、少年であればちょっとアブノーマルでより悪夢的な感じになるという直感があったからだと思います。







映画にでてくる少年たちは、大人の男性が不在なので、大きくなったら自分たちがどういう姿になるのかわからないまま成長しなければなりません。大人の女性たちも妊娠して出産することを自分たちではせずに、子どもたちを利用して種の再生のようなことをしていくわけです。まあ確かに不思議な世界だと思います。







――今回の作品を製作されて、ご自身の中で何か変化はありましたか? この作品は監督の人生の中でどのような位置づけになったのでしょうか。

まだ自分の中の変化について、はっきりとは言えません。ただこの映画を撮るのに、予算の関係でとても長い年月がかかっています。予算が限られなかなか実現しないにも関わらず、どうしてそこまで執着したのか自分でも不思議でしたが、見てくれた人たちの反応を聞いて、少しずつ分かってきた段階です。




Photo by Masataka Miyamoto 

自分の子どもの頃の潜在的な不安だとかそういったものを、この映画を撮ることによって、どこかで解消されてカタルシスみたいなことがあったのかなと。すごく個人的な映画だったのだなと思います。そういった解放感は感じています。次回作では、今度は大人を主人公にしてみようと思っています。





2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテで公開される『エヴォリューション』。悪夢のような美しい映画を見に劇場へ!




Photo by Masataka Miyamoto 


(text:長谷部友子、大久保渉、photo:宮本匡崇)

© LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015


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『エヴォリューション』
原題:Evolution

2015年/フランス/81分

作品解説
『エコール』の監督が贈る、最も美しい“悪夢”。
少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めた二コラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。“エヴォリューション(進化)”とは何なのか…?ギャスパー・ノエの公私にわたるパートナーであり、森で暮らす少女たちを描いた『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督が贈る、最も美しい“悪夢”。映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等大きな反響を巻き起こした。

キャスト
マックス・ブラバン
ロクサーヌ・デュラン
ジュリー=マリー・パルマンティエ

スタッフ
監督:ルシール・アザリロヴィック
配給:アップリンク

公式ホームページ
http://www.uplink.co.jp/evolution/

劇場情報
2016年11月26日(土)より、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ(モーニング&レイト)ほか全国順次公開



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【執筆者プロフィール】

長谷部友子 Tomoko Hasebe

何故か私の人生に関わる人は映画が好きなようです。多くの人の思惑が蠢く映画は私には刺激的すぎるので、一人静かに本を読んでいたいと思うのに、彼らが私の見たことのない景色の話ばかりするので、今日も映画を見てしまいます。映画に言葉で近づけたらいいなと思っています。



大久保渉 Wataru Okubo

1984年、座間市生。映画活動中。ライターとして『ことばの映画館』、『映画芸術』、『FILMAGA』、『トランシネマWEB』、その他映画系媒体にて執筆中。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭事務局にアシスタント勤務(2016年4~7月)。インディペンデント映画の宣伝に従事。その他、KAWASAKIしんゆり映画祭、インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン、各種映画祭にて活動中。
Twitterアカウント:@OkuboWataru

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